エンドロールを告げる言葉 3
その時だった。
ふわっ、と、貴方の香りが、私の鼻をかすめた。
優しい、花の香り。
すると、貴方の右手人差し指が、頬に触れた。
それは、桜の花びらだった。
花びらに、涙が染み込んでいく。
『もう、泣かないで』
貴方がそう、囁いているようだった。
「………!」
私は目を見開いて、桜が舞う空を見上げた。
雲一つない、真っ青な空を、私は仰ぐ。
空の中で、貴方の笑顔が見えた気がした。
まるで、私の背中を押してくれたみたいに。
………そうだ。私も、進まなきゃ。
この卒業という、大きな節目で、私に変わってほしいんだ、貴方は。
私は、桜の木にさよならを告げて、前を向いた。
「あっ、あの、、、、有村さんっ!」
ふと、誰かが私の名前を呼ぶ。
右を向くと、そこには貴方によく似た笑顔の男子生徒がいた。
....私も、変われるなら。
今を、どう生きるのだろう。
「どうしたの?」
私はそう言って、貴方に見せた、あの笑顔で応えた。
窓の外では、桜が空高く、舞い上がっていた。
fin