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Metallevma:水晶玉は流星を見通す その③

「しかし君らも飽きないな。毎日毎日何にも無い空間に手ェ伸ばして。退屈しないの?」
ルチルのその言葉にネコメの動きが止まり、口元をニタリと歪ませてルチルの顔を覗き込んだ。
「『何も無い』? 何も無いだって? そう見えるのかい? ハハハ、そうかそうか! ボクらが何も無いところを手探りする狂人にでも見えてるわけか! クォーツのひとでも聡い奴ばっかりじゃないんだねェ!」
「死にたいようだな?」
核に水晶針を突き付けられ、息を呑むようにネコメの笑いは途切れた。
「ぃやァーゴメンナサイ調子乗りました……。いやね? 違うんですのヨルチルのひと。ボクら、そうこのネコメちゃんとクリスチャンは、可視光しか感知できない残念な眼玉しか持ち合わせてない余所のメタルヴマらとは見てる世界が若干違うんですノヨ」
「……前にも聞いたな。どういう意味なんだ?」
ルチルの問いかけに、シシシと息を漏らすように笑いネコメは答える。
「いやほら、たとえばボクはクリソベリル・キャッツアイ。イワユル“猫目石”を核に持ちましてね。この猫目は現在絶賛生き別れ中の両の目玉とは違って、ゾクゾクするモノとワクワクするモノしか見てくれないんですノヨ」
「……つまり、どういうことだ?」
「ボクが触れたら死ぬような危険物の存在が、ボクには手に取るように分かる。距離も方位もね。『ワクワクするモノ』ってのはそりゃァルチルのひと」
ネコメはそこで言葉を切って、再び虚空に目をやった。
「“小さな世界”ミクロコスモスの外っ側でさァね」

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Trans Far East Travelogue60

信濃町〜四谷間には,高架やかつての城の外濠を埋め立てた場所に敷かれた線路の上を走る中央・総武線にしては珍しく本格的に掘られたトンネルがあり、その先の情景は東西どちらの方面の風景であっても、俺にとってみればとあるアイドルグループが歌った今はなき新幹線の名前を冠した楽曲の歌詞と重なる部分がある。
しかも,嫁と2人でこの区間を通るなら尚更歌詞の描写と情景が重なる部分は多くなる。
そのことを知っている俺は、電車が信濃町のホームを出る寸前にイヤホンを取り出してスマホを操作し,再生の準備をした。
すると,案の定嫁が私も聞きたいと言わんばかりに指で背中を突いてきたので背の低い嫁と顔の高さを合わせ進行方向左側を見る状態でイヤホンの片方を差し出し、嫁が装着したタイミングで曲を流す。
そしたら、前奏が流れ終わるタイミングで件のトンネルを抜けたので,見事にドンピシャで出だしの「最後のトンネルを抜ければ近付く美しいあの街」という部分が流れてきたのだが、この後の1番の歌詞が嫁に向けたメッセージを代弁しているので続きを聴いた嫁がこの辺りの高層建築物の屋上にあるネオンランプの如く顔を真っ赤にしている。
それもそのはずで、その先の歌詞は「希望が住むと信じて来た私が生まれ育った全てを知って欲しい。一番大切な人を連れて帰ること出逢ったあの夜約束した。未来はいつも思ったよりも優しくて風景が不意に馴染んでくる。夢が叶うとその想いが溢れ出して瞳から伝えたくなる。貴女と一緒に歩きたい」というものだ。
乗っている号車が悪くホームの中でも新宿通りの橋の真下で停車した関係で肝心の美しいあの街は見えなかったが、意外とすぐに発車した為その美しい街並みが見えて来た。
見方によっては嫁にそっぽを向くような格好になっているのに敢えて俺が進行方向の左を向いた意図が漸く嫁に伝わった。
東京の郷土史に詳しい一部の界隈では小学生でも知っているくらい基本的な常識と言えることなのだが,この中央線の路線の四ツ谷〜飯田橋間は外濠の一部を埋め立てた場所に敷設された線路を走っているのおり、このお堀を境に北、つまり今のこの電車から見た進行方向左側は我が街新宿区、右は宮城のある千代田区という具合に分かれている。
そしてすぐ窓の外やや後ろに靖国通りと外堀通りの分岐点と防衛省のアンテナ塔が見えたので目的地・市ヶ谷の駅に到着だ。