「もー、ごめんねってば。」
帰り道、宙はむくれている。まだほのかに残る赤に照らされ、その色に染められながら。
結局、この宙という少年について、名前と、お姉さんがいるということくらいしか分からなかった。そういえば、宙はずっと、私のことを"姉ちゃん"と呼ぶ。
「どうした"姉ちゃん"?」
ほら。名前なら、いつでも聞く機会があったろうに。そう言うと、宙はひとこと。
「…知ってるから。」
それが私には分からなかった。ただ、宙があまりにも真剣で。
「…宙?」
「ぼく、そろそろ行かなきゃ。楽しかったよ、姉ちゃん。」
「待って!」
宙は、私が初めて見る無邪気な顔で笑った。
「またな、姉ちゃん。」
「宙!」
「…また、すぐに会えるさ。」
そう言い残して消えたことだけは覚えている。
続く
時々思い出しては苦しくなる
君を想っては涙が流れる
君に出会った
好きになるつもりは無かった
無愛想な君を見ていた
君に好きって言われた
君を好きになりたいと思った
君の隣で横顔を見ていた
君に好きって言った
ずっと隣に居たいと思った
優しく笑う君を見ていた
君とふざけた日も笑いあった日も
ケンカして仲直りした日も何もかも
時々思い出しては苦しくなる
君を想っては涙が流れる
君と離れた
突き離されて突き離した
君の表情が見えなくなった
さよなら、アイシテル。
どこだ、ここ。真っ白で窓(?)が一つと椅子がたくさん。ドア、無いな。
「ニャニャ、やっと来たか。待ちくたびれたぞい、ハレ君?」
「誰だよ、てか何で俺の名前知ってんの」
見た瞬間凍りつく。猫だ、人語で話し二足歩行の猫だ。
「私か?それは別に言ってもいいことだが、言わない方が面白い。」
「じゃあ、なんで猫なわけ」
「まあ、その辺に座りたまえ。さいわい椅子は有り余るほどある」
-続く-
いつだって周りが輝いて見える。
悔しくて情けなくて。
「俺は何をしてるんだ」って。
だからこそ頑張れる。
みんなを追いかける。
走り続ける。
君を抱き締める
君を噛み締める
私はとろけて
君ははじけて
君が壊れる
君が溢れる
私は狂って
君は失って
私がそこに飛び込むその一瞬を
音もなく割れた君は舞う
その聖なる禁忌に私を溺れさせまいと
君の欠片をかき集め
ゆっくり傷つけないよう丸呑みし
私だけの君ではない君
すなわちそれは私たち
私たちはもう離れることはないのでしょう
さびしく
みにくく
かなしく
愛しく
いとしい
ただ一人の私の在り方