割れた画面をみてた
ショックではないのかと聞かれたら、
きっと、かなり、かなりショックだと答える。
画面の端から綺麗に不規則に分裂していくヒビは、放物線を幾重にも重ねたようでもあり、葉脈の様にもみえる。
難点は、文字が読みにくいこと。
それだけ。
一見、芸術品に見えなくもないし
ほんの少しだけ、本当に少しだけ、
好きになってしまいそうな割れた画面を、
明日は直しに行かなきゃなと思いつつ、
今夜だけ、今夜だけ、
この画面を愛でていようか。
「藤姐、おいくつですか。」
「ちょ、朔、おまっ…!」
藤は一瞬真顔になったが、堪えきれずに笑った。少なからず、蒼にはそう見えた。
「朔、アンタ面白いね。好きだ。
良い、教えよう。
アタシは二十だ。」
「え!?」
反応したのは朔じゃない。蒼だ。
すると藤は、蒼に顔を向ける。
「なんだい?もっと老けて見えるっていうのかィ?えぇ?」
「いや、そんなことは…!ただ、俺と同い年だと…。」
藤は笑う。
「冗談だ。敬語もいらん。朔もな。」
胸を撫で下ろす蒼を横に、朔が口を開く。
「藤姐、そういえば、何故僕達を残したんだ?」
その空間は夢幻の広がりを持っていた。
何処からともなくとろとろと流れてくる黄昏色の光は何処から流れてきているのだろう。
「ん?この辺を探索するのかい。
くれぐれも気を付けてね、ボクの作り出したモノは割と危険だから。
............あっ、そうだ。
これを持っていきなよ。」
ユリは少女に一冊の本を渡した。
「それはボクの書いたグリモワールの一つだよ。
全300ページくらいあるけど、すべて此処のキケンなモノへの対策魔法だから安心して。」
「はぁ.........。」
相変わらずの一方通行である。
その後、ユリが作ったモノを保管しようと少し外れまで行くと、必要以上に粉々となったモノがそこにあった。
「.....................グリモワールの出力調整ミス?
いや、これは..............................ふふっ。
うん、そうだね、育てるのが楽しみだよ。
この子は、【神の子】かもしれない。」
閃光とともに、その亡骸は消えた。
人から受けた傷をどうにかできるのって
人しかいないんじゃないでしょうか
あなたはいつでも嘘をつかない
自分にも他人にも
正直に真っ直ぐに生きていく
でも私は今日も嘘をつく
自分にも他人にも
災いから身を守りさらなる災いを呼ぶ
あなたは人一倍素直
子供にも大人にも
嬉しい事があれば喜び嫌な事があれば悲しむ
でも私は今日も素直になれない
子供にも大人にも
うまく思いを伝えられずにまた誰かを傷つける
あなたは愛し愛される
こころから思い続けた人に
楽しみも苦しみも今はその人と分かち合う
でも私は今日も思うだけ
こころから思い続けた人を
だってそれはあなただから