洗濯物を干そうとベランダに出ると
澄み渡った青空が広がっていた
飛行機雲が真っ青なそらに
自由を描いていく
今日見たそらを私は忘れない
心を貫く衝撃を綿はきっと忘れない
前を見た
貴方がいる
やさしいめをして
私を視る
ああ
心臓がどうかしちゃうよ
どうにでもなってくれ
また貴方のにおいに包まれました
過去を変えたくてもどうしようもない
今が苦しくても逃げることはできない
この現状を受け入れるしかない
変えられるのは今の自分だけ
行動や考え方は変えられる
充たされたいと願うけれど
充たされるってどんなことか
ほんとは あんまり知らないの
充たされたいと願うけれど
底知れぬ貴方の抱擁より
熱湯注いだ陶器に心は緩むの
充たされたいと願うけれど
ほんとは そんなこと どうだっていいのよ
充たされたいと願っていれば
人間らしいかしらと思っただけよ
「蒼は藤姐と同い年なんだから、名前で呼べばいいのに、と。そう思うのだけれど。」
身構えたわりにはどうでもいい内容で、再び拍子抜けする蒼。藤を横目で見やると、
「アタシは構わないよ。アンタを蒼と呼んでいるからねェ。」
「だってさ。」
…なんだこの茶番は。そう、蒼が一人頭を抱えると――
それは、急な出来事で。
「蒼、頭下げろ!」
反射に近い動作で蒼はしゃがむ。
三秒後の事だ。
調度、蒼のこめかみがあっただろう場所を通過し、しゃがむ蒼のすぐ傍へ弓矢が刺さる。
「刺客だ。」
立ち上がった蒼の背中に朔も背を合わせる。互いに自分の武器を構え、朔は藤に言う。
「藤姐、僕の傍にいて。危険だ。」
「あぁ…。」
被っていた編笠を目深にした。
「朔、気を付けろよ。手練れだ。」
「蒼、前方注意。北東の位置から約三秒後。…弾き返せ。」
「了解。」
「藤姐!」
そうして朔は藤の手を引き、左の道へそれる。
「朔、アンタ…。」
「うん、そうみたいだ。」
弱々しく微笑って、茂みへと藤を導いた。
当たり障りのない毎日が淡々と過ぎていく。
ふっと目についた2年前の写真。しばらく会っていない友達。会いたい。そう思った。
こんな毎日にちょっと疲れたな。
無邪気に走り回ってたあの頃に戻りたい。
みんなそれぞれの道で頑張っているんだ。
でも少しくらいいいよね。過去の記憶に戻っても。無邪気な笑顔が恋しくなった。