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無題

内緒だよって笑う貴方の
悪戯っぽく輝く瞳に見惚れてた

内緒だよって笑う貴方が
下さったのはサファイアのドロップ

如何してちゃんとできないのって
お母様は怒って打った

如何してちゃんとできないのって
ちゃんとしてると私は思った

ちゃんとするって何かしらって
考えたくて隠れた衣装箪笥

ちゃんとなんかしなくて良いって
笑った貴方が先客にいた

ちゃんとするって何かしらって
尋ねた私の頬を拭って

息を吸って吐くことさって
貴方は宝物を分けてくれた

お母様には内緒だよって
化粧箱にはサファイアのドロップ

お母様には内緒だよって
笑う貴方の瞳と同じお色

ありがとうってお口を開けたら
繊細な指先が唇に触れて

お礼を言えるなんてちゃんとしてるねって
サファイアの瞳が きらりと光った

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実験的即興詩。

肘から小指に、雫が一つ
伝って湯船に落ちたから、
ここは神様の箱庭の映し絵だね。

湯けむりの汗をかいたグラスの、傍らにそっと
手垢のしみた文庫本を
古びた蛍光灯が照らして
重たい瞼を
押さえて、
泣きたかった。
ため息、ひとつ。

おやすみを云うのは
ぼくじゃなくて、
きみでもないのかな、
だれかの声を
聴いた
気が

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狡い人。

どうして?
惚れてしまったのは
そっちの所為だからね
付き合う前からそうだった
思わせぶりな事言って
ふざけて言っているのかと思って
私ばかり好きなのかと思って
悔しくて
絶対に惚れさせてやると思った
告白されて
とても嬉しくて
毎日が夢のようで
土日の2日間会えないだけでも
寂しくて
恋しくて
いつもあなたのことを考えてしまう
私を恋に落としたのは
どうして?
狡いあなたに答えを聞いても
答えてくれますか?

3

七月時雨 #1

その町には小さな丘がありました
町のどこからでも見上げられる丘でした
その頂上には、洋館が建っていました
古い、古い、今にも崩れそうな洋館が、建っていました
その丘は星にとても近かったので、人々は洋館が遥か昔、神殿であったのだと信じていました

―七月時雨―

これは、ある夏の不思議なお話

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無題

哀しいのは可愛いから

可愛いのは哀しいだけ

怪しいのは正しいから

正しいのは怪しいだけ

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言葉。

言葉を重ねるたびに
君の目を見れなくなる
なんだか嘘をついていうようで ついていないようで
中途半端に出た言葉は あまりにも曖昧で
口をついて出た言葉は
あまりにもキレイすぎて 
君を傷つけた。

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ライブハウス

手を挙げて幸せそうな顔で
見つめているのは
僕ではなくて

君はあのバンドに夢中で

君が今聴いている声は
僕ではなくて

僕なんか視界にも入ってない
僕の方が近くにいるのに

あのステージに立ったら
君は幸せそうな顔で
見つめてくれるのかな

あのステージに立ったら
僕の声だけを聴いてくれるのかな

僕とあのバンドは程遠くて

僕もあのバンドが大好きで

君も僕と同じ気持ちでいてくれたら
いいのに

1曲1曲が心にしみた

ライブハウスってこんなに
悲しくなる場所だっけ

やっぱりあのバンドはいいな
彼女が夢中になるのも無理ないや
僕も彼らに夢中だもの

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夏までの距離

あの夏の恋だって
いつか離れていく日が来るのかもしれないけど、また思い出したように君は来るんだろうね

悲しい話はこれでやめにしよう
笑って楽しい話だけしてよう
写真にも言葉にも残さずに、記憶にすら留めず

それは愛してることになるのかって
ふたりだけの、秘密だよ

夏はまた来る
あの日と違う季節として。