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面談週間

お元気ですか?あーっ、こんな他人行儀な言葉使うと変な感じするから、タメ口でいい?いいよね、いまハタチなんだ、うっそ、見えない。強いていえば口紅赤くした、よね、ちょっと髪明るくした!どうせならもっと分かりやすく変えなよ。ほら、言ってたじゃん、金色にするって。ほんと変わってないね、そういう無駄に真面目なところ、嫌んなるわ〜、あ、あたしコーヒー飲めない。アイスティーにして。でさ、なんでわたしがここに来たのかっていうとさ、昨日電話きたの、富士川から。富士川、覚えてる?あの化粧も服もバッチリなのに、そうそう、うっすら眉毛繋がってる!!!で、なんか面談でよくわかんない連発してたら、ここにいますぐ電話しろって、あ、ケーキ食べていいの?やった、さすが稼ぎが違いますねー。じゃあ、レモンチーズタルト。えーっと、どこまで話したっけ、あ、そうだ、で、電話した訳。で、先輩に話を聞けるように機会を設けた、とか言われたから来たらさ、まさかね〜。どう最近、たのしいの?なにその顔、すごい不安になるんですけど。じゃあ、話を変えるわ。あたしね、詩を書いてるの。歌も歌いたい。お芝居したり、写真撮ったり、そうして大人になろうと思ってんの。だけどさ、こんなこと親にも先生にも言えないし、だから、ここに来たんだよね。でも、その感じだったら、ちょっと聞かないでおく。あんたがそんな風になったのはあたしのせいだもんね。わかった。うん。あたしががんばる。あ、はい、わー、きたきた。美味しそう。え、同じなの。空気読んでよ〜。ま、2人しかいないし、いっか。ま、2人でもないし。ほんとは、ね。

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鉛筆を削って、何か書くことにした。バナナを書いた。なぜバナナにしたのだろう。下手くそな曲がり具合になった。消すのも面倒だったのでそのまま放置。
畳に転がって、申し訳程度にタオルケットで腹を覆った。目を瞑る。眠れないだろう、と思った。昨晩は遅くまでゲームをしていたが、睡魔が訪れる予感が全くしない。
「スイカ食いてー」
ぼそりと口に出すと本当にそんな気分になった。スイカ割りについての思い出は、小学校の時クラスで人気のあった奴の一つ前の順番が俺で、俺が割ってしまったので気まずくなったことだけである。
気怠い。空気がむうっとぺたぺた肌に擦り寄って来た。カブトムシの真似をしていたら、晩飯に呼ばれた。

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無題

『この先には何があるんだろう』なんて思いながら その扉は透明で
本当は開く意味なんてないのかもしれない。

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寝落ちしたのだろうか。そろそろ自分も目を瞑ってみることにして、その前に、ふと、写真フォルダを開く。隠し撮った一枚きりの写真だ。辛うじてブレるのは避けられたが、正面からはさすがに撮れなかったのでアングルはあまり良くない。けれども____ああ、と思った。
こんな顔で彼女は自分と話しているのだ。
それだけで胸がきゅっと詰まった。

初めて電話越しに聞いた声が柔らかかった、それだけでこの人のこの声の瞬間、どんな顔をするのかを残しておきたいと思った。撮った写真をしつこく見返すのだろうと予感すらした。
本当に叶ってしまった。これ以上は叶えていけない気がした。だから一度ゴミ箱に移動した。目を瞑る。

目を瞑っていられたのは30秒ほどだった。がばと起き上がり、写真フォルダを再び開く。ゴミ箱から彼女の写真を復元した。

黒い目隠しを強引に巻くように、眠りに落ちることにした。

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無理だろうって思っていたのに
小数点以下のキボウが捨てられない
無理だったって分かっているのに
そのキボウが一瞬にして消えた
悔しくて 泣いて 泣いて 泣いて
それでも溢れ出す水色が気持ちよくなった
「次がある」って強がったことも
後悔なんてしてないよ
輝いてる選ばれし者をみると
どうしても胸が苦しくて…
「この人の応援にまわろう」って
そんな簡単なことも出来なくて…
握り潰されそうなプライド
たくさんの人を踏み台にして
大きなステージへ上がる
「さあ、いってらっしゃい」
もう、そう送り出すしかないんだよ
「次がある」
もう、こう言うしかないんだね
僕は僕に言い聞かせた
キレイゴトにはしない
認められなくったっていい
たくさん泣いて 泣いて 泣いて
悔しい夜をいくつも越えて
苦しい朝をいくつも重ねて
それでも挑戦し続け
いつの日かたどり着く大きなステージで
僕が笑えていますように

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無題

あきらめちゃいけないんじゃない、あきらめられないんだ。

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反抗期

人は大嫌いだ。
友達は大好きだ。
学校は嫌いだ。でも毎日嘘みたいに学校に行ってる。
誰も気付かないのに。
私が行かなくても世界は私がいないままどんどん進んでいく。
「行かないで」ってつぶやく心に私は反抗している。
素直になったらきっとダメになる。
親には反抗したことがない。
私の心とは反抗して仲良くなれないや。
それでいいや。

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なつ

夏だ。暑い暑いとみんな揃って言う。それは正しいとか正しくないとかそういう事じゃないけど、面倒くさくなる時もあるよね。分かる?なんか当たり前の事が本当にどうでも良いとこに思える時あるでしょ。例えば消しゴムのカスとか、まばらに人が乗ってる電車とか、そういうの全部鬱陶しくなる。夏のせいと言えば、そうなのかもね。でも僕は夏は悪くないと思う。だって一年に一回しかやって来ないし夏のせいにしたら可哀想でしょ。ばーか。って言ってごらん。空に、天井に、広告に、窓に、鉛筆に、手すりに、少しだけ軽くなるはず、。空は飛べないけど。

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くだらない

僕は
ありきたりでありふれている
それでも僕でいなきゃいけない

くだらない

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どんぐり

 シマリスさんがエゾリスさんのおうちをたずねた。エゾリスさんはパソコンに向かって何やら考え込んでいた。
「これ、どんぐり」
 シマリスさんがエゾリスさんの背中に言った。
「置いといてくれ」
 エゾリスさんが背中を向けたままこたえた。
「今度は何の研究をしてるんだい?」
 エゾリスさんは、「人間の交配の研究だ」と言ってから椅子を回転させ、シマリスさんの真正面にぴたっと止まった。
「遺伝的距離が近いと遺伝情報がホモになるため暗記力や身体能力が二倍になるが、自分の中にかけ離れたファクターがないから単純で想像力がない。逆に遺伝的距離が遠いと想像力はあるが暗記力が弱い。遺伝情報のホモとヘテロの割合がちょうどいいのが何でも平均点をとる秀才で、アンバランスなのが天才なんだろう。もちろん狂人になる可能性もあるわけだが」
「そういうのは優性思想とかで人間がすでにやったんじゃないのかい?」
「それは違う」
 どんぐりはあまり好きじゃないんだが、と前置きしてから口に何粒も放り込み、ぼりぼりやりながらエゾリスさんは言った。
「あれは悪い種は根絶やしにしてしまえという思想だ。結果遺伝的距離が近い似た者同士が残り、似た者同士で交配するからさらに遺伝的距離が近くなり、種が弱まる。免疫力の低下や不妊だ。で、絶滅する」
「なるほど、それで人間は減ってしまったんだね」
「よい遺伝子を残すだの悪い遺伝子を根絶やしにするだのがそもそもおかしな話なんだ。よいも悪いもかけ合わせの問題。だから優秀もばかもまぬけも必要なんだ。多様性がなきゃ駄目ってことだ。何だかこたえが出ちまったな。偶然にまかせてりゃいいってことだ。メシ食いに行こう。おごるよ。いや、どんぐりじゃなくてさ」