この夢は8月32日、夏休み延長戦だ
屋台の金魚、君はどこから来たの
綿あめの秘密、砂糖だって知ってた?
日が長いのは太陽も夏休みに浮かれているからだって、知ってた?
祭囃子が急かすんだ
夏の匂いだ、夜は溶けていく
線香花火が灯り落ちる頃、きらきらの終わりだ
夏は短い
君の言葉はとめどない
ひまわりが向く方に広がる青空を見上げる君がふと振り返った
夏休みは僕らのものだ
戦おう、延長戦だ
この夢は8月32日、誰のものにもならない夏の続きだ
何も知らない僕は君を見つめる
君がどんな人か何が好きかなんか分かりやしない。
何も知らない僕は君がいない時の寂しさを知る
頭の中で君の笑顔が浮かび
心の中で君の言葉が浮かんだ。
何も知らない僕は気づいた
僕は君が大好きなんだ。
歩みを止めちゃ 駄目だってことを
僕は既に知っていたから
いつも不安になる この先の人生が
僕らはまだ 若いんだから
強く生きてゆかなければ
何度 苦しんでも
それもまた 使命なんだ
信仰心のあつい男が、砂漠をさまよっている。もう一週間何も口にしていない。もちろん神の与えた試練である。神が、もうそろそろいいかな、って思ったタイミングで悪魔が現れる。悪魔は男に、おにぎりとペットボトルのお茶を差し出す。男はお茶を夢中でごくごくやってから、はっとなり、「なんということを」とつぶやく。
「おにぎりはいらないのかね。なあに、食べても魂をよこせなんて言わんよ。ただこの用紙に名前と、わたしたち悪魔がいかに素晴らしいかという文を書いてくれればいいんだ」
男はおにぎりをほおばりながら、用紙にびっしりと悪魔をたたえる文章を書く。おにぎりとお茶のために神を裏切ってしまったという罪の意識にさいなまれるよりも、悪魔が素晴らしいから信仰を変えたのだと考えたほうが楽だったからだ。
「この世は本当に存在しているのか。すべては幻ではないのか」
「人間は外部を知覚することによっていわゆる人間になるのだ。いま認識しているこの世が脳のつくり出した幻だったとしても、まず最初に世の中ありきなのだ」
「誰ですかあなたは」
「わたしかね。まあこの世ならざるものとでも言っておこう」
「なるほど。急に目の前に現れるなんてまさにこの世のものとは思えない」
「さっきからいたよ。急に現れたように感じたのはお前がぼうっとしているからだ。鍵ぐらいかけておけ。ところでずいぶん悩んでいるようだな」
「いま、生きているという実感がないんです」
「若者なんてだいたいみんなそんなもんだ」
「そうですか。でも、悩んでいるんです」
「いまなんてどうでもいいではないか。人間は未来を志向する生きものだ。樹木を傷つけて一定時間経過後、染み出してきた樹液を食すサルなどもいるが、人間の未来志向には及ばない。男性なら子の誕生、女性なら孫の誕生により、いつ死んでもよいなんて心境になったりするのも未来志向だからなのだ」
「未来なんて不確かなものですよ。妄想の産物でしかない」
「人間は現実より妄想依存型なのだ。確かないまより不確かな未来。人間はパンによってのみ生きるのにあらず、妄想の力によって初めて人間として生きる。幻を生きるのが人間なのだ。お前はいまでさえ幻と感じている。完璧だ」
「……なんかよくわからないけど、希望が湧いてきました」
「そうか。たまには外出しろよ。天気もいい」
「はい。久しぶりにツーリングに出かけようと思います」
ーーもしもし。A県のB警察署の者です。ご家族にCさんという方はおられますか? 高速道路で交通事故にあい、現在D市のE病院に救急搬送され……
その道は、必ず自分にとって必要な道
たとえそれが挫折の末辿り着いた場所であっても
大丈夫、その場所を愛せて、「幸せだ!!」って叫べる日が必ず来る!!