きみを統べる紅のハートが
鳥籠のなかで脈を打つ
触れた肌はひどく熱く
まるで命を燃やすかのようだ
きみはなにが好きなんだっけ
どんなふうに笑っていたっけ
僕が24個目の鍵をかけたとき
きみはどんな話をしていたっけ
火をともしたその瞬間から
消えてしまう日を恐れていた
どうしようもないぼくだから
閉じ込めておくしかなかったの
無機質な管で縛りあげて
それでも響くきみの歌
折れた風切羽を抱いたまま
ゆりかごでさえずるきみの魂
いくら自由を奪ったって
きみは夢を紡ぐのをやめなかった
そんな無垢なきみだけが
ぼくの生きるすべてだった
価値ある人になりたい
だから私は人のためを尽くす
頼りにされる人になりたい
だから私は完璧を目指す
必要とされる人になりたい
だから私はすべてを知る
あなたのために、が
私のため、になる
だから
「私と出会ってくれてありがとう」
車に乗ったら踊る電線を見るのが好きだった
白い雲を見てむりやり何かに似てると笑ってた
電車に乗ったら波打つレールをひたすら見つめていた
いつしか空を見上げることを忘れていた
誰かがまた、ため息をついた
みんなの不安や疲れが
空の向こうに飛んで行ったら
いいのに
あなたはあまりぱっとしない女子大を出て、これまたあまりぱっとしない企業に就職する。入社して三年、給料は大して上がらず、恋人なし。
休日、なんの予定もないあなたはベッドでいつまでもぐずぐずしている。一人旅がしたいなあなんて考えたりしながら。
あなたはリゾートホテルにいる。プールで泳ぎ、シャワーを浴びてからバーへ。カウンターに座り、サービスのカクテルを飲んでいると、いつからいたのだろう。隣にピエロがいる。ピエロはあなたをじっと見つめているが、あなたはとくに気にせず、一人の時間を楽しむ。
目覚めると、夜になっている。あなたは近所のスーパーへ行き、半額になっている子ども向けのランチセットを買って家でそれを食べる。ランチセットには、風船がついている。
月曜日、あなたは上司に退職願を出し退社する。コスプレのショップでピエロの衣装を手に入れ公園に向かい、ベンチでささっとピエロのメイクをすると、バルーンアートを始める。開始後いくらも経たぬうちに遠足に来ていた子どもたちに囲まれる。あなたは手ごたえを感じ、イベント会社を起こす。
イベント会社は大成功する。数年後、あなたは異業種交流で知り合ったゲーム会社の社長と結婚し、三人の子をもうける。子どもはすくすくと育ち、三人とも一流大学を出て成功する。
孫の誕生パーティーで、あなたは久しぶりにピエロの格好をしてバルーンアートを披露する。幸福な人生だ。ただ、自分が本当に望んだ人生なのかどうもしっくりこない。あなたは次々と動物やら飛行機やらを作り孫を驚かして満足するが、違和感は消えない。
私たちは
失ってしまった物を取り戻そうと日々焦る
私たちは
未だ見た事の無いものを手探りに探してる
取り戻せる物なんて何も無い
なら、私たちは
遠くの未来を見つめて
失った物と似て非なる大切なものを見つけよう