ドアを開けたら真っ暗な我が家。机に「自分でルゥ入れて食べてね」のメモ。春に行った、キャンプの記憶の匂いがした。
愛おしい喧騒。充満する煙。切れ味の悪い包丁。煮込みすぎて消えてったじゃがいも。
デジカメの向こうに見えた、貴方の笑顔。
友達には気軽にじゃあねとかバイバイだけど
好きなひとには勇気を振り絞って
またねって
いってみた
穏やかな太陽が目を閉ざし
闇を纏った夜が来る
お前の母は闇に囚われ
もうすぐその手の力は尽きる
お眠りよ 愛しい子
泣くのはお止め
風はお前を撫でようと身を振るう
闇を纏った夜は居座り
煙管の煙に泉が凍てつく
お前の母は闇に囚われ
もうすぐその声の響きは絶える
お眠りよ 愛しい子
泣くのはお止め
木々はお前を宥めようと身を揺する
空が澄んでいて4階の窓から見える山がキレイに見えてこんな感じだと僕の生まれた街も見えるかななんて見える訳ないのにな
そんなことまだ期待してしまっている
苦し紛れに放った一言がふいに誰かを傷つけた
「そんなの気にしすぎだよ」って 君は笑った
その一言で 僕は頑張れるんだ
だから そんなに気張らなくていい 君は君でいればいい
それだけでまた 明日の行方を探しに行ける
鮮やかな紅葉が終わりを迎える。
山々は雪化粧、いよいよ初雪が降る。
寒い冬には冬なりの過ごし方がある。
若い若い僕は、下に下に根を伸ばす。
やがて来る春に大輪の花を咲かせる。
春がいつ来るか分からないけど・・・
僕がこの喫茶店に通い始めて1年がたつ頃。
僕は毎朝決まった時間に喫茶店に訪れる。
店内に響く鐘の音。うん、心地良い。
「おはよ。」
「ども。」 味気ない会話も1日の始まりの合図のようだ。
「マスター...えっと...」
「...いつもの、だろ?」
自慢げに僕に言う。
「1番安いのばっか頼みやがって。」そういう店主の顔はどこか楽しげ。
珈琲と具沢山のサンドイッチ。
未だにブラックは飲めないから一連の動作のように角砂糖3つを珈琲に投入。
それでも少し苦い。
静かな店内に今日もTVは暗いニュースを流してる。勿論それは店主のどうでもいい阪神の話とともに聞き流す。
就職先に困ってた僕は急に話を切り出す。
「ねぇ、マスター...」
「どした?」 意外に早かった返事に少し戸惑う。
「...あ、あのさ、マスターがもし倒れたらこの喫茶店どうすんの?」 そんな事聞いてどうする気なのか自分でも解らない。
「...そうだなぁ。そん時は潔くこの店たたむわな。」 とマスターは笑って聞かせた。
質問の内容を間違えてしまったことの後悔と
答えた時のマスターのどこか悲しげな顔は胸に痛く刺さった。
忘れたくない想いが遠退いていく。忘れてはいけない想いが次第に霞んでいく。
いつだってそうだ。時間は僕らを連れてただ進んでいく。過ぎ行く時の中で日々の出来事は少しずつ、そして確実に鮮明さを失っていくようだ。覚えていられるのは脳天を貫くような衝撃をもたらすことだけ。
いつかのことが、想いが、徐々にぼやけていく。今思うこともいつかは忘れてしまうのだろうか。忘れたくないはずの、尊いはずのこの想いの輪郭がいつの日か見えなくなってしまうくらいなら、
いっそこの時間を止めてくれ。