お腹が空くから涙が出るんだ
歌いたい歌を歌ってよ
行きたいところへ連れていってよ
立ち止まっても足元を見ずに
眠くなったら目をつぶって
好きな本を思い出そう
ひとつふたつ数えたら
オムライスのことでも考えよう
お腹がいっぱいになったら
幸せだって口に出た
あなたが確かに微笑うから
大好きだって口に出た
至らない自分を見つけては、
ダメだダメだと否定をし、
底のない谷へと自ら落ちていく。
そんなのいかないと分かっていても、
自然と湧き上がってくる負の感情。
けれども、前を向いている自分も確かにいる。
夢に向かって進んでいる自分もいる。
夢半ばだからこその感情なのか?
内にいるもう一人の自分に、
違和感を感じている。
幸せってなんだろうな
ありふれた問いを心に浮かべて
風をきる自転車
きっと今他愛のない会話をしてた小学生は
暖かい家でゲームでもして
今すれ違ったカップルは
確実に二人一緒にいるのが幸せなわけで
絶対的な幸せなんてないんだって
答えを出した私は
こうして風に吹かれて
ベースの重みを肩に感じて
目の前を野良猫が通り過ぎていったりするのが
幸せだったりするわけで
逃げたい気持ちでいっぱい。
震える手が今を物語ってる。
間違える度に吐くため息。
苛立ちだけが僕を追いやる。
未練を数えて生き延びる
損を恐れて蹲った私が
ただ無下にしている日々
見る人が見れば贅沢な
見る人が見れば脆弱な
そんな 私の生きた日々
意味なんてあるのかと自問して
意味なんてないだろと他答され
意味なんているのかの終着は
答えであるのか 逃避であるのか
朝から胃が痛かった。私は中年になっていた。もう死んだ父の年をこえたはずだ。父は二度離婚し、三度目の結婚をする前に事故で死んだ。二度目の離婚のときは、私は高校を卒業したころだからよく覚えている。父は、娘(私の異母妹)と別れるのがつらかったのだろう。しゅんしゅんと泣いた。でかいなりした、いい大人が、しゅんしゅん。離婚の原因を作ったのは自分自身なのに。
その年、初めての彼女ができた。二歳上の、小柄で、胸の大きな。多くの男性が大きいバストに魅了され、女性が大きいバストに憧れるのは、授乳期の母親の乳房に刷り込みされているからだとか。私はプレゼントの包みをほどくようなわくわくした気分でブラジャーを外した。あらわになった規格外の胸の大きさよりも、規格外のブラジャーの大きさに驚いた。
父はヘビースモーカーだった。私は吸わない。父の妹、私の叔母も喫煙者だ。孫ができて、禁煙を何度か試みたが三日と続かない。高齢出産で生まれた子どもは煙草をやめられないケースが多い。高齢の母親は授乳能力が低下しているため、乳離れが早く、乳児期の口唇性の欲求が満たされないまま大人になっているから口に何かがないといられないのだ。煙草のほかに、茶、コーヒーなどの嗜好品も不可欠だ。アルコールも、飲めればの話だが。
煙草を吸いながらーーいまにして思えば大人っぽく見せたかっただけだったのだろうーー胸の大きな彼女が私に、「くだらない話をしていることを気づかせたかったら、相手の言ったことをおうむ返しにすればいいの」とよく言っていた。私はだから彼女の言うことをすべておうむ返しにしていた。
どうでもいい汎用性のない話ばかりする人間に対して、こいつは何を考えているのだなどといぶかってはいけない。何も考えていないに等しいのだから。
彼女はよく、私の行動を実況していた。何も考えていないやつは人のやっていることに目を向ける。考えいるやつは人の考えていることに目を向ける。彼女とは、半年で別れた。
考えることができない人間に考えることを強要しても意味がない。
彼女は結婚したのだろうか。したのだろう。子どももできて。自慢の乳房も、垂れてしまったのだろう。
好きのたった2文字も言えなくて
何も知らない君の隣で
ニコニコ笑ってたりなんかできなくて
ずっと一緒に入れたらなんて言わないよ
だからせめて、
今はまだ隣にいさせて