「サミットの存在をちらつかせて質問をかわすなんて、卑怯じゃない?」
「でないと、私の首がとびますからね。物理的に。」
少しとがった声で追及するが、チャールズは慣れたものだ。
「時が来れば言うと申し上げているじゃないですか。」
「本当にそんな時が来るの?」
冷めた目で見ると、
「来ない方が望ましいのですが。」
と、陰を落として言う。それがあまりにも思い詰めているようにも見えて、瑛瑠は次に続く言葉を失った。
瑛瑠の目も真剣になる。
「他の西洋妖怪も こちらに送り込まれていると前に言いましたよね。それには、付き人もついてきています。ですから私だけ、お嬢さまに口を割るわけにはいかないのです。
お嬢さまは先程、何を隠しているのかとお尋ねになりましたね。察しがよくて何よりです、推薦が通ったはずですね。」
推薦とは。
しかし、つけ入る隙もないチャールズの言葉によって霧散した。
「後ろには政府がいます。もっというのならサミット。
賢いお嬢さまなら、これが何を意味するのかわかりますね?」
サミットとは、魔界における各種の王達の集まり。絶対的権力者達。
もちろん、そのうちのひとりには、瑛瑠もといパプリエールの父もいる。
逆らってはいけない。干渉してはいけない。
「黙って従っておけと、そういうことなのね。」
規模の大きさに寒気が走る。