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LOST MEMORIES ⅨⅩⅦ

瑛瑠の欲しいもの。きっと共有者のことだろう。同じ境遇であろう英人もそうだろうと考えるのは容易い。
目の前にある とは、英人自身がなるという解釈でいいのだろうか。
では、最優先事項とは。
英人は、今1番気付くべきこととも言っていた。その前には まだ、とも。
似た台詞を聞いたことがある。
"どうせ気付いてないんだろ?"
彼の正体がヴァンパイアだと、そういうことではなかったのだうか。まだ気付いていない に引っ掛かりを覚える。
上手と言った英人が直前に気付いていると言ったことは、瑛瑠の体調不良の原因。
瑛瑠は何か繋がりそうなのをひたすら紡いでいく。
挨拶の後に1番に言われたのは体調についてだ。瑛瑠がわかりやすいかどうかの前に、すでに知っていたのだ、原因となりうるものを。それに瑛瑠が気付いていないから、警鐘を鳴らした。
しかし瑛瑠は、その事実を受け入れたくなかった。そしてその理由が非常に人間的なことが、自身を苛立たせた。
慣れが早いのか、流されやすいのか。
ようやく瑛瑠は、現実に目を向け始めた。

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夏に

扉を開けたら、
咽るくらいに蒸し暑い、のしかかるような熱気と、
軽快に羽を震わせる蝉たちの鳴き声が、
爽やかな青白のグラデーションに混ざり合う。
一歩踏み出せば、混沌の中に引き込まれてしまいそうで。
でも、そのうだるような夏に体を預けてしまいたくて。
立ち止まったら、このまま時が止まって。
同じような白昼夢を、狂ったように見続けることだろう。

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葡萄の安心院

例年通りの雨模様
探偵ごっこはおしまいにして
はじける傘を買いに行こう
夏になったら明るすぎて
暗く見えるくらいの青の中
春の残りを探しに行こう