『クリス。ねえ、僕の声がわかるよね?』
クリスだなんて何百年も前の君のことで今はあの頃とは違う君のはずなのに、本当は中身はクリスのままで僕を覚えたままじゃないかと思えてしまって仕方のない僕はつい昔の名前を呼んでしまう。
(うーん)
君は見えない僕にその顔を見せずに、僕の声のことで考え込みながら部屋を片付けていく。
(ごめん、思い出せない)
僕は悔しくなる。
(なんども誓ったんだよ)
僕はここにいるのに。
地上に生まれ変われば前世もあの世にいた時の記憶も消えるというのは、本当に本当のことだった。
(僕だよって何度言ったとしても君はもう二度と僕のことを思い出したりしないんだ)
悲しさがこみ上げた。
涙が溢れる。
(え、、)
僕が見えないはずの君が僕の方を見る。
あの頃とは違う君の黒色の瞳は不安げに揺れ、涙が溢れていた。
僕の感情を自分の中に感じたんだ。
(君は変わらないよね)
どうしようもない悔しさを嬉しさと懐かしさが胸を少しだけ温める。
生まれ変わって姿が変わっても君は君だ。
人にちょっと弱いけど、誰にでも優しい君はあの頃と何一つ何も変わらない。
だけどと、僕は地上にいる僕を気にする。
地上にいる僕は変わっちゃった。
僕は強くなりすぎたね。
僕も地上の僕のことは少し考えてしまうことはある。
強さは人を傷つける為にあるわけじゃないのに時々地上の僕はそれを履き違えてしまうんだ。
それでも僕は僕だから、僕は僕のことを信じるしかない。
涼しい朝は
心が浮かぶ
澄んだみずみずみずいろの
海を割って
会いにいく。
ふと深夜のベットに忍び寄る影
その影は私を舞踊会に誘う
けれど思い出す 校門で見かけたあの影
学校でも時々見かけて
私の心を抉り取っていく
怖いんだ 踊りたくないの
深夜0時になったから かぼちゃの馬車も
綺麗なドレスも 消えてくんだよ
この世のものは全て消えていくんだ
そう考えたら怖いんだ
私が今見てる気色
私が今感じてる事
私が今聴く音たち
私が今息をする事
全部全部消えていく日が来る事
分かってはいるんだ
でも怖いんだ
地震とか 大雨が続くと
災害で自分が死んでしまうのではないのかとか
考えてしまう私がいて 怖いんだ
ねぇ、こんな私だけど、やっぱり君は
私の事変だって笑うんでしょう?
君は「憂鬱」のひとことだけ残して
私の心を泣かせているんだから
気づかないし、知らないんでしょう?
君が好きな事も
「君が好きだから」まだ死にたくない事も
知らないんでしょう?
深夜のお客さんにオーダーしてあげましょう
「あの子の──────憂鬱をなくてあげて」
「それが私がシンデレラとしての──」
そういって、0時の鐘が鳴る─────
ベットの上で シンデレラは静かに息を引き取り
意外にも満足そうに微笑んだシンデレラ
その次の瞬間───
あの影が
光を放ち シンデレラに──
どうしてそこにいるの?
人類なんか滅んだって構わない
どうしてそこに立っているの?
僕らさえいれば構わない
どうしてここに立っているの?
夢見心地でも構わない
滅亡前夜 どうして君らはそこにいるの?