手に持ってるものを放り投げた。
一気に軽くなる体。
放り投げられたのは、自分だった。
どうしようと頭を悩ませる彼女を前に、どうすればいいかわからない子ども2名。
ジュリアの目が光った。
「ジュリアたちはね、指令を受けて人間界にいたの。その指令っていうのが、東雲を鎮めること。今暴れてる狐が、その東雲。」
時間がないのは百も承知である。彼女は説明することを選択した。
「東雲を鎮めないと魔界が危ない。なのに、東雲がここに来ちゃった。それを止めるために、ジュリアたちもここに来た。」
わかったようでわからない。
エルーナの質問、何してたの?どうしてここに来たの?
狐を鎮めろという指令に従っていて、その狐が魔界に来たから追いかけてきた。
その狐は何者なのだろう。なぜ魔界が危ないのだろう。
どうやらジュリアはエルーナの質問に答えただけ。それ以上を説明するつもりはないらしい。
「さっきので、東雲に見つかった。こんなに離れてるのに……。」
悔しそうに言うジュリア。
「君たち二人は、何がなんでも逃がさなきゃ行けない。」
「どうして……?」
思わず声が出てしまった。条件反射だ。
「未来のこの世界を背負う子たちだから。」
3人の隠れていた壁に衝撃が走る。
ジュリアが羽織るマントに、パプリエールとエルーナは包まれた。
「出口は塞がれちゃったけど、絶対に道は作るから。だから、ふたりは必ず逃げて。」
「姉ちゃんは!?」
エルーナが叫ぶ。もはや悲鳴に近い。
「大丈夫、エルをここから逃がすまでは一緒にいる。」
彼女の目はもうこちらを向いていない。
残酷な言葉だった。
浅ましい感情が、深い慟哭を飲み込む。
灼熱の怒りが、君の心を凍りつかせる。
何気ない言葉は、一生忘れられない言葉へ。
君と歩く、風が薫る
ふわり髪をそよがせて
笑い合えば心弾む
お連れしましょうどこへでも
カントリィブルース、軽やかな音色
週末の空は晴れ模様
色が並ぶ街の光り
明るい道とショウケース
当たり前を溶かす場所さ
歩きましょうか、手をとって
カントリィブルース、華やかな音色
週末の空は晴れ模様
長い夜に酔えばふたり
ぬくもり消えず空は白む
鳥が愛を歌う朝の
霧にかくれてくちづけを
カントリィブルース、音は消えて
まだ耳に残るのはほんのかすかな余韻
もしも、踏み出す一歩が
自分の一欠片の勇気なら、
君はどうする?
踏み出してみる?
それとも躊躇って、
一歩引くかな
夢を追いかけ続けることは
そう簡単でもなくて
泣きたい日だってあるはず
勇気なんていらない、いらない、いらない
このままでいいよ、僕は、私は、
このままずっとダメダメの人間
わかっているよ、それはいけないって
でもね、もう、できないんだ
戻れないんだ、過去には
泣きそうな顔
やさしいねの言葉と
打算の隠れたナイフの柄
血腥い音の刃はないと
たかをくくっているような
(それそこ!
ひとつきひとおもいに)
二人の間の50センチを
僕の悪意は風に流れる
…もうたくさんだと言う声は
きっと空耳なんだろう