天才だって、努力してないわけじゃない。頑張って初めて、その才能が開花して、それに気づく。そう思うな。そう思いたいな。
もうふたりは口を開くことができなかった。
「入り口作るには……ここからならレイかスティールが声届くかな……。エレンに来てもらいたいけど……参謀が戦線離脱は痛いよね……。」
壁から中央をのぞき見るジュリアは、ぶつぶつとひとり呟く。
出てくるのは知らない名ばかり。
そうかと思えば。
「ああもう!チャールズのバカ!ジュリアにこういうの向いてないの知ってるくせに!」
急に叫んだと思ったら、振り返りだき抱えられる。
「とりあえず行こ。」
頷くしか選択肢はなかった。
「ちゃんとつかまってて。」
さっきよりもだいぶ速い。そして、もはや壁づたいではなく、直線的に進む。中央に近づくのは避けられない。
不安を抱きながら、ジュリアの細い首に手を回し抱きつく。
中央へ近付いている。子どもふたりにも何が起こっているのか、その一部を垣間見ることができた。
大きな狐。想像通りといえばその通りなのだが、黄金色の毛並みは目を奪われるくらい美しかった。これだけ暴れていながら、一切のくすみがない。そして、燃えるような赤い眼からは、遠くにいながらもあてられるような怒りが伝わる。しかしその声は、痛いくらい悲しみに満ち溢れていて。
一体、何に怒っているのだろう。何が、悲しいのだろう。
横ではジュリアが大きく息を吸った。
いっしゅん息を止めて吐き出したそれは、
「チャールズのバカー!!」
この台詞を聞くのは2回目だった。
さよなら かき消して午前三時
振り返らないムーンライト
自由落下に抗うきみの目の色
静かに落ちてゆくこころ さざめき
カウントダウンはいらない
ミモレ丈のスカートが揺れた
夜の海に惹かれるなんて陳腐だね
ミモレ丈のスカートが揺れた
使い捨ての感情に名前なんてつけない
ミモレ丈のスカートが揺れて
ミモレ丈のスカートが揺れて
きみは知らない街を駆け抜けてゆく
夜明け前のうた さよなら
台風が横切り、涼しくなった。夕方、目覚めると、わたしは蛙になっていた。とりあえず、けろけろ、と鳴いてみた。わたしの鳴き声は低く、いい声だった。調子に乗って、けろけろ、けろけろ、鳴いていると、雌の蛙が近づいてきた。雌の蛙はわたしよりはるかに大きく、少し、恐怖を覚えた。わたしは雌の背中に乗り、産卵を手伝った。手伝ううち、わたしの身体は雌の背中にめり込んでゆき、最終的に目だけを出す格好になった。産卵を終え、じっとしている雌をねらって蛇が近づいてきたのだけれど、雌はじっとしたままで、一体化して動けないわたしは雌と一緒に、のみ込まれた。
気づいたら、バツイチ子持ちと暮らしていた。男の子が二人。上は高一、下は中一。
しばらくして、財布のひもは、嫁──入籍していないから法的には嫁ではないが──が握ることになった。こづかい制になったのだ。わたしひとりでの外食は禁止。社員食堂も利用してはいけないと言われ、弁当と水筒を持たされた。身体に悪いからジュースは禁止。もっとも毎日ジュースを飲むようなぜいたくができるほどの金は渡されていなかった。こづかいを切りつめ、たまに会社帰りにコンビニで買って飲むビールがしみた。
下の子どもが大学を卒業するころ、ガンが見つかった。末期だった。わたしは半年後に死んだ。
わたしの遺骨を墓に納めると、嫁は墓にすがり、泣いた。後追い自殺でもしそうなぐらいに号泣していたが、さんざん泣いたらすっきりしてしまったらしく、以来、嫁の顔は見ていない。
こんな深夜に
起きてるのは夏休みだから。
夏の独特の高揚感に浸って
明日も休みだぁって余裕かまして
今日は何をしようか。
そうだね、時には悲しい歌でも聞きながら
あの人とのトーク画面でも眺めていようか。
よろしく、から、OKしてくれてありがとう、
これから宜しくね、こちらこそよろしくね、
どこか遊びに行こう、どこがいい?、
楽しかったね、うん、またいこうね、
大好きだよ、俺の方が大好きだよ、
なんか違うなぁって、...別れようか、
ごめんね、ありがとう、ありがとう、まで。
最後まで読み終わるのに、
いったい何時間かかるだろうね。
朝日が顔を出す頃には、大会頑張ってね、までぐらい読めるかな、なんて考えるけど。
きっと途中で悲しくなって、涙が出てきて、
泣き疲れて、いつの間にか寝てるんだろうな。
前に進める日は、いつくるんだろうね。
太陽が
沈んでしまったら
雑草はどうやって生きていけばいい?
お願いだから
無理しないで
沈まないで。
ぬるくなった浴槽にひとり
憂鬱なまま独りよがり
冷えきった関係をもう一度
温め直そうなんてそんなこと
思いもしない思いたくない
無駄な熱を使いたくない
いっそこのつめたいココロとカラダのまんま
くたばっちまえばいいのかな
くしゃみをしたらワタシのバスタイムも終わり
風邪を引いちゃうあがらなきゃ
ひとつ年上の君
横に並べることはないって
わかってるよ
君を好きになってからずっと
わかってたことさ
でも今年の私は
去年の君に並んだんだ
まだ鮮明に思い出せる
去年のこと
やっとわかる君の気持ち
やっとわかる私の愚かさ幼さ
いつもそうさ
いつだって私は追いかけている
追い付けないのが好きなんだ
追いかけるのが好きなんだ
もちろん
今も好き