そう思ってる時点で
好きなのかもしれないけど
こうでも言わないと
自分の脳が
勘違いしたままになりそうで、
口にしないと
だめな気がした
るなはかまわず、わたしを紹介して、空いている席に着くよううながした。わたしが着席すると、扉が開き、生徒が三人、入ってきた。こちらも初めて見る顔。イケメンが二人、美少女が一人。
「先生、僕たちも紹介してください」
イケメン二人がユニゾンで言った。
「これは、あなたたちのしわざね」
抑えたトーンで、るなが言った。
イケメン二人が何か言おうとするのを、るなは手で制した、ように見えた。
イケメン二人が口から血を吐いて倒れた。
美少女が動いた。おそらく、るなと同じ能力を持っているのだろう。るなが倒れた。
美少女がわたしにゆっくりと近づいてきた。わたしに手をかざす。わたしは目を閉じた。
目を開けると、るながわたしを混乱した目で見ていた。血を吐いて机に突っ伏す。
美少女の身体を手に入れたわたしは、満足して学校をあとにし、原宿に遊びに出かけた。原宿駅で、わたしはスカウトされた。
しばらくして、わたしはアイドルになった。わたしはやりすぎない、ほどほどの天然キャラを演じた。無知で世間知らずな人間は、安心できるキャラクター、素朴でわかりやすい天然を好む。裏表のありそうなスター性のあるキャラクターは単純な認知の枠組みでは処理できないのだ。安心できるキャラクターほど狡猾なのに。
わたしは売れた。売れまくり、人気絶頂で、ステージから消えた。交通事故で死んだのだ。ひき逃げ事故だ。犯人は見つかっていない。見つかるわけがない。事故は見せかけ、実は政府の手によって殺されたのだ。真っ先に、わたしが記事にした。新聞記者になったのだ。
角を曲がると、女子高生が突進してきてわたしにぶつかった。わたしは見事にひっくり返った。
半身を起こすと、わたしがわたしを見下ろしていた。わたしと女子高生の身体が入れ替わっていたのだ。外観がわたしになった女子高生はさらに混乱した表情になり、走り去った。
立ち上がって制服の汚れをはらう。うちの学校の制服だ。バッグからスマホを探り当て、カメラで顔をチェックする。はて、見たことのない顔だ。生徒の顔はだいたい把握しているのだが。歩きながら思い出した。今日はわたしのクラスに転校生が来る日なのだ。
未だ混乱した表情の(そりゃそうだろう)わたしの身体になった生徒が職員室から出てきた。
わたしは生徒に声をかけた。生徒、蒼井るなは泣き出してしまった。姿はわたしだからみっともないったらありゃしない。わたしはあわてて、るなの手を引き職員用トイレに入った。もちろん男子トイレだ。男子トイレに連れ込むのもおかしいが、とっさに出た行動だ。
「わたし……わたし……」
るなはしゃくりあげ始めた。大泣きしそうな勢いだ。わたしは冷静にさとした。
「泣いている場合じゃない。状況を受け入れろ。わたしはお前のクラスの担任だ。お前はまずわたしをクラスに紹介してから早退するんだ。住所はスマホに登録しておいた」
わたしはそう言ってポケットからスマホを取り出し画面に表示した。るなはこくんとうなずいた。
「ところで、何をあんなに急いでたんだ? 十分始業に間に合う時間だったろうが」
るなはぴたりと泣きやみ、真顔で言った。
「わたし、超能力者なんです」
「何だと?」
「国の研究機関の暮らしにうんざりして逃げてきたんです。それで、追われてて」
「……とにかく、まず教室に行こう。話はあとだ」
るなを連れ、わたしは教室に入った。わたしは目を見張った。
生徒が全員、床に倒れていた。
今までの自分が嫌い
変わりたい この夏休みで変わる
クラスの人たちをビックリするくらい変わりたい
もっと人と接することができるよいになりたい
変わりたい