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LOST MEMORIES CⅥⅩⅠ

祝瑛瑠思考停止。
では、あの反応は何なのだ。訝しげな目、そしてその目を丸くしたのは確かに見た。
そもそも、夢の中の少年エルーナの面影をバリバリに残したお前は一体誰だと言いたくなる。
否定されるとは、万が一、いや億が一にも予想していなかったので、続ける言葉が迷子である。
では、あの夢はあくまで夢だったということだろうか。
チャールズの夢を思い出す。そして、考えを元に戻した。
たとえ夢だとしても、何らかの意味がある。そうでないと、チャールズの様子に説明がつかないから。
「明日、」
学校は休みだ。
瑛瑠は一言。
「私に付き合ってください。」

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LOST MEMORIES CⅥⅩ

すっかりご機嫌斜めな祝瑛瑠さん。
しかし、目的があって彼のところへ来たのを思い出しました。
「あの、英人さん。」
声を発したものの、どこから聞こうかという思考へと足を突っ込んでしまった瑛瑠。
本当に確かめたかったこと、それは夢の内容。10年前のこと、英人のこと、会ったことがあるのかということ、イニシエーションのこと。
どれも重い。そして、できれば時間をとって話したいことだ。
「瑛瑠?」
「英人さんには、」
軽くて、yes/noで答えられ、導入にもなる質問。あるではないか。
「お姉さんはいらっしゃいますか?」
英人は訝しげにこちらを見る。たしかに、家族のことに関してはいきなりではあったかもしれないと、音にしてから反省する。ある意味で踏み込んだかもしれない。しかし、これが導入になるのだから、答えさせなければならない。
「それも、10歳ほど年の離れた。」
今度は目を丸くする。
沈黙は肯定ととるぞ、イケメンヴァンパイア霧英人。
しかし彼から出た言葉は、予想を見事に裏切ってくれた。
「僕に姉なんていない。」

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秋が儚いのは貴方のせい

貴方と
花火大会にも行けなかった
満天の星空も見れなかった

貴方と
夏らしいこと一つもできなかった

貴方は
花火は来年も見れるし
星空はいつだって見れるよ

そういってくれたあと
夏が私に終わりを知らせた

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誰かを想う

知りたくなかった。
こんな気持ちになるんなら。
後悔を味わうくらいなら。
出会わなければよかった。
って思うのに、

もう一回それを望むのはわがままかな。

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宣誓

誰もいない暗闇で
そっと手を挙げて
そうして独り、声を上げれば
それは誰のものでもない、
自分だけの宣言
挙げた手が、声が
細かく静かに震えても

その言葉がある限り、
その手を下げない限り、
決して諦めてはいけません

やり遂げるまで、止まらないで

そうしてピースサインを、掲げてみせてよ

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僕のルーティン

せっかく用意したのに
食べ損ねた朝ごはん
もうすっかり冷えてしまっているようだ

いつもならあたたかくほろにがい
ブラックコーヒーをカップにそそいで
シロップもミルクも
何も入れずに飲んで
寝惚けた、何も無い頭を覚ますのに
今日はそれすらも忘れてしまった

寝癖のひどい髪
いつもならきちんと整えるのに
今日はそのまま街に溶けてみた

不思議だね、季節って。
夏を挟んだ秋、
僕は変わってしまったようだ。

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ちくちく

どうしてそんなことするのってあなたは言った

嘘や演技でひとに好かれても意味ないでしょ

嘘や演技の君はほんとの君じゃないつまり君じゃない


あなたにはわからない

娘自慢だけで過ごす専業主婦のママ

娘の幸福だけが生きがいのおばあちゃん

「自らすすんでする不幸話は自慢話、まともにとりあう必要はない。俺がもっとおもしろい話をきかせてあげるよ。……ネタ? ネタはこれから仕入れる」


ほらね

そんなだからあなたはお空に行っちゃうの

そんなだから星になっちゃうの

わたしはいいの

これでいいの



夏が終わる

なぜだろう

胸がちょっとちくちくする

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オトナコドモ

左の道を行けば 左の街につく
右の道を行けば 右の街につく
そんなふうに 単純な作りなら
ぼくら迷わないのかも
世迷言 垂れないかも

研いでないメスじゃ
ろくに切れもしないけど、
みんなで刺せば終わる頃には、
死んでる模様。



左に回っても 右に回っても
ちょうど真ん中で出会えるのに
池の向こう岸 石を投げ合いながら
なかなか辿り着けない
腰を振りながら

オスとメスとか
オトナとコドモとか
廻る命を堰き止めてうだる
穿つような正義で真っ二つ


網目絡む世界 誰もが捕まって出られない
あなたの手を握らせてよ
あなただけは信じさせてよ
「信じないことこそ真の真実」と
はぐらかしてあなたは死んでいった。


研いでないメスじゃ
ろくに切れもしないけど、
みんなで刺せば終わる頃には、
死んでる模様。

オスとメスとか
オトナとコドモとか
廻る命を堰き止めてうだる
穿つような正義で真っ二つ

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企画案!

みなさんこんばんは、シャア専用ボールです。久しぶりに企画をやりたいと思います。以前に白麗と云う生徒が企画してくれたのですが、三題噺と云って「三つのお題をひとつのポエムに」入れ込んでつくる遊びです。参加は自由です。

今回は新しい試みとして、三人の出題者にそれぞれ一つずつのお題を出してもらいたいと思います。第1回の出題者は、旧友でもあるnebla、高校生を代表して fightmusicぼーの と フローリスト。以上の三人にお願いします。それぞれ一つずつのお題を本稿にレスでお寄せください。三つ揃った処でぼくことシャア専用ボールが改めて企画スタートのカキコミを立てます。


参加者の皆様は是非「三題噺」と云うタグ(括弧、#等不要です)をつけてどしどしご参加くださいませ。

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LOST MEMORIES CⅤⅩⅨ

教室に入ると、前の席には鞄が置かれてある。歌名の手伝いへ行ったのだろう。歌名の席にも、ストラップがついた彼女のであろう鞄が置かれてある。自分も手伝うと申し出たらよかっただろうかと席につきながら思う。
登校時間は比較的早い瑛瑠だが、本を読んでいる彼はそのさらに前についていたのだろうことが伺える。
瑛瑠は鞄だけ机の上に置き、彼の隣の席を借りることにした。
「おはようございます。」
声をかけると、ここへ瑛瑠が来ると見越していたように、驚くこともなく読みさしの本を閉じてしまう。
「おはよう。体調は?」
「お陰様で。……邪魔をしてしまってすみません。」
英人は僅かに首を振った。
「あの、お借りしていたリングはネックレスにして持ち歩いています。ありがとうございます。このまま私が持ち続けていてもよろしいんでしょうか?」
瑛瑠が確認として聞くと、何を今さらと微笑う。
「勿論。持っていていい。」
やはり余裕そうな彼だが、心配は拭えない。
「何かアテでも……?」
すると、ぴくりと形の整った眉をあげる。
「聞いてないのか?」
何を、だろう。
こんな質問をされるくらいだ、聞いていないということだろうと思うが、生憎何のことか見当がつかない。
英人は苦笑して、
「ごめん、聞かなかったことにして。」
なんて言うものだから瑛瑠は不貞腐れる。
「何のことですか。」
「そのうちわかるから。」
やっぱりこいつ、気に食わない。