表示件数
4

LOST MEMORIES ⅡCⅩⅣ

文献。瑛瑠が、見ればよかったと後悔したもの。
息を飲む。
「何か、わかりましたか?」
英人は頷いてくれた。それが、心強い。
「10年前とかいう単位の問題じゃない。毎年行われていた。」
ずっと鍵だと思っていた10年前。
毎年、行われていた?
「人間界へ派遣されるプロジェクトが、これまで毎年行われていたらしい。1年ごとにそのメンバーが変わる。」
「待ってください。そのようなことが行われていたと聞いたことがありません。」
英人は頷く。
「10年前、そのプロジェクトは終了した。それ以降は、人間界へ送られたという記録はあがっていない。」

2

名前の詩

花も 鳥も 風も 月も、

君も 僕も 人と人と中に
愛を感じて 育てていけるように

あの歌みたいなつながりを見つけてみたいと
天守閣の上で夢をみる

私の名前に似た虎と
僕の名前に似た魚

0

無題

紙とシャープペンシルを用意して。
人間を描いてみよう。出来るだけ粗雑に。
輪郭は最低限それとわかる程度の雑さで流線状にシュッ、シュッ、シュッ、と3、4本くらいで。
顔も適当に、シミュラクラ現象を意識して、トン、トン、トンと。
出来た絵を見てみようか。人間だと思って見ちゃいけない。これを1つのキャラクターとして見るんだ。確かに目も口も輪郭もある。けど何かが欠けている。何か重要な概念が崩壊している。そんな気がしてくる。それが『ナニガシ』だ。

0

おやつの時間

パンケーキを10枚焼いて

桜の模様が散りばめられた
しろいワンプレートの
少し深くて広めのおさらに
1枚ずつ並べた

さて、みんなで食べようか。
ん?
あれ、9枚しか無い。

つまみ食いしたの、
だーれだっ?

0

   

忘れられない

とらわれた甘い幻想

鷹の尾の鈴

ちりん
ちりん

せわしなく音をたて

真っ直ぐに

君は風になって

空の向こうへ

届かない
届かない

それは真っ直ぐで
そして美しかった

とらわれて

どうしようもなく
胸が痛む
苦しい

私はとうの昔に

とらわれていた

6

『雪がとけるとどうなる?』

私はね、大人になるのが恐い。
子どもって、無限だから。
私は、子どもでいたい。

『雪がとけるとどうなる?』

“水になる”んじゃないよ、“春が来る”んだ。
ほらね、子どもでいたいでしょう?

でもね、子どもでいたいって言うと
大人は怒る。
しょうがないから、黙ってるんだ。

それでも、私はネバーランドにいたいから
ピーターパンに想いを乗せる。

16歳だった私が、ちょっぴり成長してからも続ける
唯一の抵抗。

6

     

いつも忘れてしまう

その時間切れを

いつだって思い出すのは

締切日の前夜

いつも逃してしまう

その千載一遇を

いつだって悔やむのは

すれ違いの最中

鳴り止まぬ耳鳴りは

とうの昔に頭を砕いた

掴め

その不確かな記憶を

己に語れ

memento mori.

memento mori.

決して忘れてはならないこと

刻み付けるのだ

己の魂に

Ad animadverto somnium tuum.

そのペンで

君は何を語る?

0

ハキダメギク

この世界には質素だけど素敵な花がある
その名前は掃溜菊
ハキダメギクという

とある植物学者が掃き溜めで見つけ
付いた名前

今の世界って掃溜菊のよう

せっかく素敵なものも
掃き溜めのゴミにまみれて汚く見えてしまう
本当は素敵な人に巡りあえることもあるのに
一部の汚い人のせいで汚れてしまう

悪くない人が責められて
泣いて掃き溜めが増えていく
そんな悲しい世界

だけど掃溜菊の花言葉を思い出して
「不屈の精神」「豊富」
ゴミ出し場で必死に胸を張って咲いている掃溜菊
目立たぬように小さな花を咲かせて
変化を見極めながら
背筋をシャキッと伸ばす掃溜菊


さぁ、あなたも姿勢を伸ばして。