町から少しはずれたカフェ。カフェというと『Dandelion』一択だった瑛瑠は、新鮮な気持ちだった。
落ち着いたBGMに望の声が乗って届く。
「まだ気まずくなるかも、なんて思ってる?」
アイスティーの氷がとける。
からんというあたたかい音を端で聴きながら、瑛瑠はゆるく首を振った。
「もう、平気です。私たちの間には、信頼関係がありますから。」
微笑む瑛瑠に、望も返す。
「じゃあこれからは、男として見てもらえるように頑張るよ。」
「そういうところですよ、望さん。」
レモンの香りが漂う。
瑛瑠は、レモンティーを手にした。白い湯気が淡く消える。
ふっと訪れた静寂。
「望さんは、素敵な方ですね。」
レモンティーを置いた瑛瑠は、不意にそんなことが口をついて出た。
タイミングを見誤ることが多い僕は、
自分を変える機を逃し続けて五年になる。
何回逃したか。
157,766,400回だ。
俺には密かに恋心を寄せている人がいる。
かといって、その人がどんな人なのか知らないが。
しかも名前も知らない。
だったらなぜ恋に落ちたのかと言うと、
…一目惚れだった。
朝早い電車に乗って通学する人なんてそういない。
ある日俺の前にその人が座っていたんだ。
その時だったな。
一瞬で彼女に恋をしたのは。
彼女と話すことが出来たらどれだけいいだろう。
ま、今日も俺はスマホをいじっているフリをしながら眺めるだけだがな。
ある日。
「やっべえ!遅れる!」
俺は駅に向かって走る。
「(なんとか間に合ったー…)」
電車が出る1分前に乗ることが出来た。
普段乗る電車より1本遅いやつだからあの人はいないだろうな…
何駅か乗っていた時。
「(人が多くなってきたな…)」
人に押されて、窓に手をついた。
そこに女の人がいた。
俺が恋するあの人だった。
「(やっべ、これって壁ドンじゃんか//)」
めっちゃドキドキしてる。
俺だけかな、こんなに意識してるの。
あーもう!
いっその事、この気持ちが伝わればいいのにな…
全員を救えるわけではない。
同じように、常に救われるわけではない。
救いたくても救えない人間がこの世にはごまんといる。その誰もが、救われることを望んでいる。
酷く歪んだ世界だと、そう思わないかい?
書くことが思い付かねえ。誰か何か題材くれませんか?恋愛は無しで。そういうのはよく分からんのです。
「聞いてくれよ」
「何だい?」
「今、一つ大きな悩みを抱えていてな」
「へえ、それで?」
「どんな悩みかは聞かないでくれるんだな」
「わざわざぼかして言うってことは、言いたくないってことだろ」
「ああ。で、その悩みについてなんだが。解決方法は分かっているんだよ。僕が死ねばすべて解決するんだ」
「じゃあそうしたら?」
「ところが話はそんなに簡単じゃないんだ。もし僕が死んだら、今度はもっと面倒な問題が生じるんだよな」
「そうだな……。僕はお前じゃないから、お前に何があったかなんて知らないし、お前がどんなに辛いか、悲しいかなんて分からない。けど、お前の一人の友人として、言わせてもらう。もっと頼ってくれて良いんだぜ?そんな面倒な問題一人で抱えるのは大変だろうに。自分が死ねば解決とかこじらせ過ぎだろ」
「問題はそうも行かないってことだ」
「まあ、大人は信用できないもんな」
「うん」
「それにお前、友達いないもんなぁ…」
「そうなんだよ…」