あの子と話すときいつもちゃんと話せない
話す前はあんなに伝えたいことがたくさんあったのに
いざ目の前にするとまともに目をみて話せない
楽しく話したい
たくさん話したい
ずっと話したい
それなのに…
話し終わると嬉しさと哀しさと寂しさと嬉しさと…
話したいことは山ほどあるけど
なかなか言葉になっちゃくれないよ
話せたとしても伝えられるのは
いつでも本音の少し手前
「え、ちょっとすごすぎません? というか…ホントに?」
わたしは、自分がまだ知らない異能力者の”特性”を聞いて目を丸くした。でも当の本人達は何ともなさそうだ。
「別に、ボクらにとっちゃ普通のことだし… もちろん本当のことだよ? 例えばあの人とか、異能力者だし」
そう言ってネロは、商店街の入り口付近を歩く女の人を指差した。
「あーあとそこの人とか」
「それと、あっちにいる2人組とか」
耀平や師郎も、それぞれ駅前を行く人々を指さしていった。
「本当に分かるんだ…それに、異能力者って結構いるもんなんだ」
「ね? アタシが言った通りでしょ?」
セレンさんはわたしに向かって片目をつぶってみせた。
「あと、能力によって他の能力者を察知できる範囲が変わるんだ。俺の場合は半径80メートルぐらい」
そう師郎は異能力者たちの、他の能力者を察知する”特性”について補足した。
「…まぁ、この特性みたいなのがなかったら、おれ達は多分出会ってないだろうな…」
「だよねー」
「だな」
そんな彼らの呟きを聞きながら、やっぱり異能力者はすごい、とわたしは思った。
『雨が降りしきっている。青白く暗い町の通りを、少年はしとどに濡れて歩いていた。漆黒の短髪をよりいっそう黒く濡れそぼらせ、前髪から滴り頬を濡らす雨水は、まるで涙のようだった。少年はその町を知らなかったけれど、どこか懐かしく遠々しい心持ちがした。
町はまるで静かだった。寝静まったのとはまた違った、あたかも町の人々が皆ごっそりいなくなったような静けさだった。この世界に自分一人だけでいるかのような幻想と虚像を見て、少年は震えた。それでもなお、少年は歩き続けていた。
間もなくして、そっと雨が止んだ。と同時に、少年は背後に何かがいるようなイメージを抱いた。きっと顔を強ばらせ用心深く振り向くと、一人の女性がそこに立っていた。凛と立って微動だにせず、その目は青く燃えるガラスのようだった。前に揃えられた両手には、鍛え抜かれた鋼の短剣が握られていた。
誰だ、と少年は怯えていることを悟られぬよう、いかにも落ち着き払ったように尋ねた。女性は静かに、こう答えた。
「私はデュナだ」
少年はたじろいだ。デュナ。言葉と力とを司る女神にして、他の神々の統括神だ。最高神であると言う神官もいる。
どうしてこんな町にいる、あなたは地に降りることなど滅多にない方だろう、そう少年は言った。するとおもむろに、彼女の口から煙のようなものが溢れだした。三人、いや、四人の女性が同時に話しているような声で、彼女は話し始めた。
「私は私を語らせる力によってあなたに告げる。すべては創世のアルセイシアに。すべては破壊のディアルキアに。終わりと始まりは変わりなく、永久に留まらんことを。
ディアルキアの息子、盾を失う
王の末裔、侵略の子を討つ
旅は不完全なまま終わり
そしてもう一度、少年は█████」
そう言い終わるか終わらないかの内に、デュナはその姿を薄れさせ、消えていってしまった。そのせいで最後の言葉が聞き取れなかった。
気づけば再び雨が降っていた。さっきよりもひどい豪雨だ。少年はうつむくと、もう一度歩き出した。
私の住む町は
なにもない
駅は通らないし
コンビニまでは1時間かかる
なにもないけど
ここの運動場で
花火したなとか
君と私にしかわからない
集合場所があったり
白線だけを歩く
ゲームして
車はあんまり通らないから
落ちるように押したり
あの坂を登ったとこにある
枝垂れ桜を
この前一緒に見に行ったり
これでもかってゆうほどに
思い出が 転がってるから
なにもなくはないのかもしれない
ひかってまわれ
私の記憶をまわして消して
きたない私を
きれいにするように
ひかってまわれ