勉強と部活をそこそこ両立させて
大学受験をして
まあまあな大学に入って
勉強やバイトやサークルを何となくこなして
就活なり国試なりとりあえず頑張って
手堅い就職先を見つけて
周りの人の真似をして働く
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・
・
君は本当にそれでいいのかい?
君がかつてどうだっていいふりしてぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に放り込んだその夢は
鮮やかな色のままちり紙に埋もれた君の志は
このままじゃゴミの日が来て焼却炉に運ばれてしまう
燃やされてしまってから後悔しても遅いんだよ
拾い上げるなら今のうち
灰にするなんてもったいない
思い切り色んな色で塗りたくって、輝かしてやれ
報われなかったらその時はその時。
再利用の方法を考えよう。
「そんで今日は主要観光地が混んでいる予想と夏日に近い気温になる予報から、適当な近さであまり繁盛してなさそうな甘味処に案内してくれる予定だった」
「うんうん」
「……木村。お前今何やってる」
「仕事」
「だよなぁーー!! なんで前々から立ててた予定すっぽかして仕事にのめりこんでるのかなぁーー!! えらい! いやえらいけど! 休も!? 折角のGWだよ!? なんで休まないの!? 」
木村は絶賛仕事中だった。時刻は昼に差し掛かり予報通りの夏日近い気温がじっとりとした汗をかかせる。冷房をつけたかったが、多々良木が腹を下すので窓を開けている。汗でずれた眼鏡を指で押し上げつつ、詰め寄ってきた多々良木をどうどうと宥める。
「矢継ぎ早に言わないでくれ。それでだんだん顔を近づけないでくれ。角が刺さる。……そりゃ僕だって休みたいよ。でも入っちゃったんだよ、仕事」
「いつ」
「昨日」
「俺との予定は」
「それに関してはマジですまん」
「…………」
「ごめんって」
「…………日本〇ね」
「おいどっかの呟きパクってんじゃねぇ」
あーあこんなことなら幽世に誘拐すればよかったと割とマジトーンで呟く多々良木に、木村は苦く笑う。
「今の日本なんてこんなもんだよ。逆にいい観光になったでしょ」
「……確かに日本の裏側は覗けたわな」
どうだった?
まっ黒だった
あはは、それな
乾いた笑いが広くないアパートの一室にこだまする。
「なあ木村」
多々良木は、PC画面にへばりついてキーボードを叩く木村に声をかけた。とあるアパートの木村の部屋でのことである。
「何だい多々良木。ポテチ食いながら漫画を読むのはいいが汚さないでくれよ」
「わぁーってるよ。……んでひとつ訊くが、日本って確かいまGWだよな?」
「ああ」
「俺はそれを機に現世(うつしよ)に観光しに来た」
「そうだ」
「木村は現代日本を案内してくれるという約束付きで」
「んだっけか」
多々良木はポテチのかすを口に流し込んでコーラを呷った。多々良木の喉からごくごくとおよそ人間では出せないような音を出したが、げっぷは不思議なことに出なかった。力でねじ伏せたようだ。
ぷはっ
日本は今、前代未聞の10連休の真っただ中にいた。鈴木も暇ができたことだし、前々からこちら側に来たいと喚いていた多々良木を誘ってみた。鈴木としては一緒に温泉にでも行ければそれでよかったのだが、多々良木が「どうせだから現世案内しろ」と言ってきたのでいろいろと予定をたてていたのだ。