深呼吸のしかたなんて
とっくの昔に忘れてしまった
過呼吸には至らぬように
浅く、息をして、息をして。
今日もまだ、生きている
脳のネットワークが単純なうえにオッドアイ──右目がブルー、左目がブラウン──であるわたしは、上京して数か月、ずっと孤独を噛みしめていた。
ある日の夜、たまには都会的な気分を味わってみようと洒落たかまえのイタリアンレストランに入ると、ピエロがカウンターでマリオネットを操っていた。白塗りの、赤鼻をつけた定番の。
客はわたしのほかに一人もいなかった。マリオネットからメニューを受け取り、しばらく考えて、瓶ビールとパスタを注文した。ピエロは瓶ビールをカウンターに置くと、キッチンに立ち、調理を始めた。
ビールを飲みながら、ちらちらとピエロを盗み見た。頬の輪郭、胸のふくらみ、腰まわりから女性だとわかった。パスタを食べ終えてから、ビールを追加し、舌がなめらかになったわたしは、「女性のピエロなんて珍しいね」と言った。するとピエロはわたしをじっと見つめ、舌ったらずな口調で、「偏見を持たれがちな見た目のあなたでも偏見で人を見るのね」と言った。
わたしはおそらく、驚いた表情を浮かべていたと思うが、ピエロは頓着せず、わたしを凝視し続けていた。澄んだ瞳で。
まだ子どもなのだ。少女なのだ。はっきり臆せずものが言える段階に彼女はいるのだ。
「年はいくつなの?」
「十四」
「十四か……それくらいの年に戻りたいな」
わたしはため息をついて言った。
「戻って、どうするの?」
「ダンスがしたい。わたしが育ったのは田舎で、学校にダンス部とかなかったから」
「それから?」
「さあ……そうね……永遠に、踊り続けていたいかな」
うつむいてそうこたえると、ドアが開いて団体客が入ってきた。わたしはメニューを持ってカウンターから飛び降り、団体客のテーブルに向かった。
「このマリオネット、左右の目の色が違うのね」
団体客の一人が言った。
「珍しいでしょう。気に入ってるんです」
わたしは少女の足元で、盛大に踊った。
風花視点
え?話数が中途半端だって?
しょうがねえだろ。読んできゃ、わかるから。
涼香を連れてきてから、数時間後。
あの後一人で人間界に行って、涼香のそばにいた奴らに聞いてきた。
どうせ、斬りかかってきたり、即座に銃で撃たれると思っていた。
しかし、現実はそうじゃなかった。
美月とかいうやつは、襲いかかってきたが、結月ってやつが止めてくれたおかげで怪我せずに済んだ。その後に、結月と二人で話をした。
「涼香は?変わってないよな?」
そう聞かれた。少しだけ悲しそうな顔で。
前にも見たことがある、この表情。人間らしい、
その表情。
「多分、この世界でのことは、忘れてる。
思い出すことはできるが、そうそう思い出さない。」
そう答えると、
「じゃあさ、せめて、そっちの世界に、ピアノっていう楽器があるなら、弾かせてあげてくれねえか。」そんなことを言い出した。
「良いぜ。おんぼろピアノ倉庫から出してやるよ。」そう笑えば、結月も吹っ切れたように、
「よろしくな!」と言って笑った。
そんなことが二人の知らない間にあった。
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No music No life の次の曲が決まっていません!
皆さん一緒に考えてください!
宜しくお願いします!
この作品の略称も考えてください!
イカとにゃんこ
私はピエロ
実際見たことないけどね
私もピエロ
オッドアイの白猫がいる
君もピエロ
白猫ってあんまり優しくないんだよ
君がピエロ
少女はまた笑うんだ
君が白猫
あんまり優しくないよね
君も白猫
君につながる白い糸
それは
僕の白い糸
kimi no utagoe ga
natsu no itijou no
ao wo
-------------------------plane
kirisaku
kireme no youna
hikoukigumo wo
rennsou sasete yamanai.
汗ばんだ布を肌から剥がすように、私はブラウスを脱ぎ捨てる。スカートは床で円を描いたままだ。上半身を左右に捻り、ボキボキっと音がする。
今日の仕事は終わり。
私はマリオネット。私がマリオネット。
ハッシュタグやクレープ、パンケーキの上の生クリームが、私を糸で釣る。
宿題や先輩、憧れの韓流スターが、私を糸で釣る。
距離感のわからない現代は、何億光年離れていても画面を通せば十センチも要らない。
随分と近い距離で糸を引かれている。生きにくいのも頷けるね。
マロン、こっちおいで。
にゃあぉ。
私はマリオネット。私もマリオネット。
陰口や期末考査、窓を開けた瞬間の空気の循環が、あの子を糸で釣る。
靴下や日焼け止め、ブラジャーや体育着が、あの子を糸で釣る。
嘘をつくのも暴くのも随分楽な現代は、わかりやすく言えば知識の戦場。
私がレズだって、精神異常とは言われないけど。どうせ性癖のカテゴリを抜け出せてはいない。
マロン、今日は何してた?
ごろごろ。
夜になると不安定になる。
最悪だ。
今日はとてもいい日だと思っていたのに
大抵この時間になると裏切られてしまう。
この前死んでいた黒い鳥は次の日には消えていて、あの日の僕と今日の僕はまるで別人で。
時々、僕が寝ている間に何もかもが作り変えられてるんじゃないかと思う。
だから最後の抵抗で、僕はこんなにも不安定なんだ。
涙が止まらないよ。
きみからお釣りでもらった200円が他の
100円玉と一緒になったら見つけられな
いんだよきみからもらった言葉がわたし
をつらぬいてもなんども思い返すうちに
それはわたしの言葉になってしまうんだ
いままで会えなかったことを謝ったらき
ょう来てくれたことを喜んでくれたねお
かげでいままで会いたかったことを正直
に認められましたずっと会いたかったの
ですきょうきみに会えてほんとうに嬉し
い
散々いじめてくれてありがとう。
おかげであなた方に復讐する決意が出来ました。
私に溜まっていた憎悪をこれからみなさんに遠慮なくぶつけることができると考えると、それはそれは気分が高揚します。これまでとは違う気持ちです。これを皆さんは「希望」とか「幸せ」って呼んでいたのでしょうか。
例えばあなたは生まれたばかりの私を捨てて、例えばあなたはそんな私を見世物にして金を集め、例えばあなたは私にたくさんの傷を作って、例えばあなたたちはそんな私を嘲笑して悪者に金を払いました。
ただ、私がオッドアイだったってそれだけで。
ただ、私の瞳の片方が黄色だったってそれだけで。
緑と黄色。この世界では最悪な色の組み合わせです。特に黄色なんて、悪魔の瞳の色ですから。
でも、その悪魔が私の前に現れてくれたんですよ。黄色い双眸を輝かせて私のもとに降り立ちました。
『君には才能があるよ』と、そう言って。
それはもう甘いお誘いでした。甘くて甘くて甘ったるくて、クラクラしちゃうようなお誘いでした。「甘言」というやつなんでしょうね。本当に甘いお言葉でした。
悪魔は私の黄色い瞳に魔力を込めてくれました。この目で見たものは私の想像の通りに動きます──例えそれが物理法則を無視していても。
さあ、これから憎悪の限りを尽くしましょう。これから私は悪魔の道化になるのです。わかっています。私の願いが満たされたら、私の魂は悪魔のものになることくらい。でも、たかが私ごときの魂で満足してくれるなら、安いものです。なんなら身体もセットでお渡ししたいくらいです。
だから、私はピエロになるのです。例え悪魔の目的がわかっていても、今度は人ではなく悪魔が私を笑い者にしていると知っていても、それでも私は進んでピエロを引き受けます。
さて、まずは誰から始めるべきでしょう。
やはり私を捨てた両親からでしょうか? いえ、それは最後にとっておくのも良いかもしれませんね……。
少女は世界の破滅を目論みながら、穏やかに笑む。
暗い世界で一人 狭い世界で静かに
そうしてれば 消えた星が また
輝き出すんじゃないかって
ありもしないって分かってても
信じてしまう
無いものを求め続ける
哀しい時間だけ重なっていく 今日も明日も
もし僕なら見てられないだろうね