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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 番外編 待ち合わせ中のお話

みんなで集まるときの集合場所である、ショッピングモールの屋上は、遮るものがほとんどなく、今の時期は本当に暑い。
夏場に限らず人がたくさんいるような場所ではないので、同類同士で集まったり、普通の人に聞かれちゃいけないような話をするにはぴったり―
「…」
つつっ、と腕をつつかれて思わず隣を見ると、パーカーの袖にちょっと隠れた手がスッと棒の付いたアメを突き出してきた。
「…黎?」
「…やる」
さっさと受け取れと言わんばかりに、黎はアメを突き出した。
「…なんで?」
こいつが他人にモノをあげるのは珍しーなー…と思いながら、おれはそれを受け取った。
なんかのお礼のつもりか、それとも…
暫くの沈黙の後、黎は口を開いた。
「…誕生日」
「?」
「お前、こないだ誕生日だったじゃん」
「…あー、そうだったな。1週間前だけど」
確かに先週…21日はおれの誕生日だった。バースデーケーキを除けば、誰かから何ももらってないけど。
「…1週間遅れだけどはぴば」
なんかこの人にしては珍しいセリフを聞いて、おれは思わず吹き出してしまった。
「待って、今のちょっとだけかわいい」
「…」
当の本人は照れているのか、つっと向こうを向く。
おれは、ははは…と笑いながら、もらったアメの包装を剥いた。

「あっ、このアメ黄色だ」
何気なく呟くと、黎がちらとこっちを見る。
「…それお前の目の色と揃えたから」
「ん?」
何のことだかよく分からなくて、おれは首をかしげる。
「…だって”コマイヌ”の目は黄金色…大体一緒じゃん」
あ、そっか…と自分の手に目を落とし、再度隣に目を向けた。
「え、お前やっぱかわいい」
「…かわいかない」
また黎はぷいとそっぽを向いた。