僕の声は響いたか?
君の声は響いたか?
静寂を駆ける赤い閃光
夜の景色を裂いた
僕の声は届いたか?
君の声は飛んだか?
夜を彩る白いリボン
静寂な世界を撫でた
まだもう少し
愛を信じてもいいですか
くだらない正義を振りかざして
こころに正しさを求めないで
そんな言葉は聞き飽きたから
あともう少し
愛を信じてもいいですか
あたしの中のこの疑心が
どれだけあたしを傷つけるかは
煩わしいほどわかってるから
だからもう少し
愛を信じてもいいですか
あぁ あたしはどうやって
あなたを少しも失わずに
抱きしめることができるのか
同じ空の下に
あの鳥がいる
あの写真の子がいる
あの俳優がいる
あのひとがいる
あなたがいる
戦争が居る
社会資料室に篭っていた桜木は涙を流していた。
目の前で女子が涙を流しているというのに俺は何もできない。しばらくお互いに固まったままだった。
「……ごめん」
沈黙を破ったのは震え声の謝罪だった。
「……みんな心配してたぞ」
「……あ」
桜木は一段と申し訳なさそうな顔をして
「みんなのこと、忘れてた」
と言った。
正直、怒りたくもなったが、泣いている女子をさらに泣かせる趣味はない。ここはノータッチでいくことにした。いや、俺にはノータッチにしておくことしかできない。桜木がなぜここに逃げ込んできたのか、なぜ泣いていたのか、なんと声をかけていいのか、何も知らないのだから。
「ごめんね。自分のことでいっぱいいっぱいで」
啜り泣き程度に落ち着いてきたらしい桜木は、どこから話したものかと思案する表情を見せた。
「……聞いてくれる?」
「この状況で人を見捨てるほど薄情じゃない」
あはは、と笑うよりはそう言って。
桜木ノアは打ち明けた。
意味わからないかもしれないけど、と前置きして。
「私はね、日常的に日常生活ができないの」