「…ねぇ鷲尾さん、”悲劇”って…」
思わずわたしがそう尋ねかけた時、わたしの言いたいことに気付いたのか耀平が話に入ってきた。
「…例えば、”魔女狩り”。そこのハルカとかいう奴が言いたい悲劇はこういうのだろう」
「まぁそんなところね」
そう答えて鷲尾さんはちょっとだけ間を置く。
「…まだ魔法や神が、当たり前のように信じられていた頃の話よ。ふとした時に能力を使っているところを見られたり、常人とは違うような挙動を見せたりすると、色々疑心暗鬼になりすぎている時代だったから、”魔女”だとか”魔法使い”として狩られていったのよ」
「…え」
わたしは話の内容に絶句する。
”魔女狩り”という言葉は知ってたけど、まさかその裏に”異能力者”の存在があったなんて。
―それなら、鷲尾さんが常人に異能力がバレるのを嫌がるの事に納得がいく。
異能力者は前に同じ能力を持っていた人間の記憶を引き継ぐ。だから、その時代の事もよく分かっていたりするのだろう。
実際、”魔女狩り”っていうのは凄惨なモノだったらしいから、あれほどではなくとも、”異能力”のせいで痛い目に遭うのは1番嫌に違いない。
万人受けしない下手くそな
僕のうたを聞いてくれたあなたに、
ありったけの感謝を込めた
このうたが届きますように
奇跡をたくさん見つけたんだ
君の名前も私の名前もあの人の名前も
全部見つけようって躍起になって
延々と大好きな場所を語って
新しい紙に書き綴ったふざけた言葉も
全部私の笑顔を生み出して
寂しくなってた気持ちがなくなった
歩き疲れた脚をさすって
私はいっぱい笑顔になって
そして大好きを抱きしめるの
『自分らしく生きる』
それが幸せに繋がるんだなぁ
マイペースという言葉は良くないと思われがちだけど、自分自身にとってはすごく意味のある大事な言葉
自分は自分 その個性を大切に
人通りの絶えた夜道を、二人組が歩いていた。
一人は、まだ秋なのに冬用の暗い色のロングコートを着てフードを目深に被った長身の青年。もう一人はその彼より頭一つ分強背の低い少女。ぱっと見誘拐の現場だがどうもそうでは無いらしい。ご存知、チャチャこと伏見清次とリータこと安芸華世である。
「しっかし君、お華さん、何でこんな夜遅くにこんな人通りの無い場所にいたんだ?危ないんじゃあないか?」
「ちょっと外出先で用事に手間取りまして。チャチャさんは?」
「僕も同じような感じだな。……っと、ちょっと安芸ちゃん、こっち」
そう言って伏見清次が安芸華世を街灯も無い細い横道に引っ張り込んだ。最早事案。
「どうしました、チャチャさん?」
「いや、ほら、僕らの少し前方、一人歩いてる奴が居るだろう?」
確かに、彼らのおよそ50m先を一人、歩いている人間が居る。
「はい、居ますね」
「奴がそこの十字路を横切るときに、ちらっとカーブミラーに顔が映ったんだが」
「よく見えましたね」
「そいつの目、一つっきりしか無かったんだ」
「え……。つまり、一つ目小僧?」
「………」
「………」
「……捕まえるか」
「捕まえましょう」
「よし。君は下から、僕は上から攻めよう。この距離、詰められるか?瞬間移動とか」
「はい、『5m』ずつなら」
「よし来た!」
伏見清次は輪ゴムのバリアを空中に展開し、その上を走り出した(今回はスニーカーを履いていないので、例の高速移動は出来ないもよう)。安芸華世は短い瞬間移動を繰り返して一気に距離を詰め、二人ほぼ同時に彼の一つ目に飛びかかった。
玲視点
今日は何か大切な日だった気がした。9月9日。毎年笑っていた日。誰かの誕生日だった気がする。三人に聞いてみたけれど誰の誕生日でもなかった。じゃあ、誰の誕生日だろう?私に兄弟は、あれ?
いたっけ?いなかったっけ?何も思い出せない。涙があふれてくる。何故?どうして?兄弟がいたかどうか。それがわからないだけで私は、今現在泣いている。ただ、とても大切なものをなくしてしまった気がする。事の始まりはこの数日後だった。
結月視点
暴走トラックの対処に当たれと言われ、現場へ駆けつけると、自動運転のトラックが暴走していた。ちなみに今日は、一人でどうにかなりそうだったので、三人はおいてきた。美月には、めちゃめちゃ心配されたが。暴走トラックの行く先には、少女の影があった。トラックを刀で切り、トラックを強制的に止め、少女のもとに駆け付ける。「おい!大丈夫か?」そう尋ねると、少女は少し辛そうにしながらもうなずいた。彼女を抱えて救急車を呼ぶと、十数分でこちらについた。その場にいた警官の話によると、僕が真っ二つに切ったトラックは警察署で処理してくれるらしい。仕事が終わった僕は、先ほどの少女の安否が気になったので、彼女が運ばれた病院に行ってみた。彼女の名前は高山 瑠衣というらしい。高山って玲と一緒じゃん。なんて考えながら、病室のドアをノックする。すると、「はーい」と元気な返事が返ってきた。ドアを開けるとそこいたのは先ほどの少女。「初めまして。」というと元気に「はじめまして!」と返してくれる彼女。見た目は14歳ぐらいに見えるが、言動などから、少し幼いのだと考えられる。軽く自己紹介をした後に、瑠衣からこんな風に呼ばれた。「じゃあ、これからよろしくね!王子様!」と、いわれた。「王子様?」と聞くと、「だって、瑠衣のこと助けてくれて、こんなに優しくしてくれるんだよ!結月は王子様だよ!」と答えてくれた。「そっか」と返すと嬉しそうに、「うん!」と瑠衣は笑った。「瑠衣は何歳なの?」と聞くと、「瑠衣はねー、14歳だよ!」と答える瑠衣。その割には、言動や行動が幼くないか?なんて考えるが、後で考えることにして、もう一つ質問をした。「瑠衣は兄弟とかいるの?」と尋ねると、「お姉ちゃんがいたんだけど、急にいなくなちゃって、それで探してたの。あ、お姉ちゃんの名前は玲だよ!」…は?
愛 丁寧に
触れて摘んで
嗅ぐような 仕草が良い。
愛 泥濘に
熟れてしまって
解けそうもない 君が綺麗。
電車の窓から夜の街を見ていた
そこに映るのは夢の時間
私でいいのかなって思いながら
二人の空間はいつの間にか三人に
笑顔の側にはいつも君が
ねぇ、今日は何であんなに笑ったんだっけ
思い出せない事が嬉しかった
時は過ぎ
気づいたら空に月が浮かんでいた
あぁ、そうか、もう終着駅か
君の声が聴きたくて
イヤホンを耳にあてると
流れてきたのはadvertisement
スキップ スキップ スキップ…
何回しても見つからない
僕の一番好きなうた
恋はいつもSHUFFLE再生
スキップは5回できるけど
PLAYBACKはできないの
寂しさ紛らわそうと
イヤホンを耳にあてると
流れてきたのはオススメの楽曲
好きって 好きって 好きって…
何度言っても伝わらない
僕の一番好きなひと
恋はいつもSHUFFLE再生
好きって5回以上言っても
君のPLAYLISTは作れない
僕の声は響いたか?
君の声は響いたか?
静寂を駆ける赤い閃光
夜の景色を裂いた
僕の声は届いたか?
君の声は飛んだか?
夜を彩る白いリボン
静寂な世界を撫でた
まだもう少し
愛を信じてもいいですか
くだらない正義を振りかざして
こころに正しさを求めないで
そんな言葉は聞き飽きたから
あともう少し
愛を信じてもいいですか
あたしの中のこの疑心が
どれだけあたしを傷つけるかは
煩わしいほどわかってるから
だからもう少し
愛を信じてもいいですか
あぁ あたしはどうやって
あなたを少しも失わずに
抱きしめることができるのか
同じ空の下に
あの鳥がいる
あの写真の子がいる
あの俳優がいる
あのひとがいる
あなたがいる
戦争が居る
社会資料室に篭っていた桜木は涙を流していた。
目の前で女子が涙を流しているというのに俺は何もできない。しばらくお互いに固まったままだった。
「……ごめん」
沈黙を破ったのは震え声の謝罪だった。
「……みんな心配してたぞ」
「……あ」
桜木は一段と申し訳なさそうな顔をして
「みんなのこと、忘れてた」
と言った。
正直、怒りたくもなったが、泣いている女子をさらに泣かせる趣味はない。ここはノータッチでいくことにした。いや、俺にはノータッチにしておくことしかできない。桜木がなぜここに逃げ込んできたのか、なぜ泣いていたのか、なんと声をかけていいのか、何も知らないのだから。
「ごめんね。自分のことでいっぱいいっぱいで」
啜り泣き程度に落ち着いてきたらしい桜木は、どこから話したものかと思案する表情を見せた。
「……聞いてくれる?」
「この状況で人を見捨てるほど薄情じゃない」
あはは、と笑うよりはそう言って。
桜木ノアは打ち明けた。
意味わからないかもしれないけど、と前置きして。
「私はね、日常的に日常生活ができないの」