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口裂け女

ある日の夕方の事だった。
外出先からの帰り、ちょうど進行方向が西向きだったので、夕日の光を避けるために、地面に目をやりながら歩いていた。
ふと気付くと、目の前の地面に人の影が差していた。どうやら誰かが目の前に立ち止まっているようだ。そして、目を上げてしまった。今思えば、なぜあんな事をしてしまったのだろうか。ほんのちょっとだけ、進路を右か左にずらすだけで、それ以降の出来事を全て回避できたかもしれないのに。
そこには、一人の女性が立っていた。今の季節には合わない、真っ赤なコートを着て、顔の下半分をマスクで覆っている、やけに背の高い女性が。自分も決して背が高い方ではないが、それを鑑みても、185cm以上はあった。
『私、キレイ?』
「ポマ……」
しかし、そこより先を言うことはできなかった。『奴』の隠し持っていた草刈鎌の冷たい刃が、首筋にぴたりと当てられたのだ。
『私、キレイ?』
『奴』が再び訊いてきた。その笑っているようにも怒り狂っているようにも、はたまた泣きそうにも見える不気味で狂気的な目つきは、『普通』だの『まあまあです』だの、そういう中途半端な答えは一切受け付けない、という強い意志を感じさせた。
『私、キレイ?』
『奴』が少しいらいらしたように、再び訊いてきた。先程より首筋に当てられた鎌を持つ手に力が入る。どうやらよく手入れされているらしく、このまますっと刃を引けば、流血沙汰は避けられないだろう。
もはや猶予は無い。
「………答えは『NO』だ」
そう言いながら、『奴』が動き出す前に、持っていた鞄を『奴』の顔面目がけて、思い切り投げつけた。『奴』が咄嗟に空いている左手で顔を覆ったそのタイミングで、首に当てられた鎌の刃を避けて、元来た方向に全力で駆け出した。

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ありがとう

私はいつか鍵を握って
この空へと旅立つ

今はまだ道の途中

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今までお世話になりました
小さな一人のお話はまだ完結していません
小さな彼と一緒に、掲示板を離れ、
共に成長しようと思っています

またお会い出来る日まで

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Stay Alive

僕達はちっぽけで僅かな歪みに負けてしまう
理想なんて遠く手に届きそうにない
何度も僕を殺した 僕は死んだ 心は生きさらばえた
今この命が続く事に意味を見出すのならばそれは
君の為に
そう思うだろう 全てを犠牲にし君が知らない恩の為に僕は生き続ける
たとえ君が求めていないのだとしても
変わらない思いに突き動かされて僕は
歩いていく
未完成のパズルは今日も欠け続ける
何かが足りないけれどまだそのピースは見つからない
きっと君というピースには今の僕だけでは足りないのかもしれない
Stay Alive
独りはやっぱり寂しくて
誰かの隣で立っていたくて 歩いていたくて
泣いていたくて 眠っていたくて
僕にとっては君以外有り得なかったんだ
どこで何をしているの?
この寂しさが胸の中から消えない今日を僕は歩く
君の為にStay Alive ただStay Alive

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わたしね、

堂々と君を好きだと言える世界に生まれたかった

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遺書。

惰性で歩く道はいつだって綺麗だった
雑草ひとつない明るい路地裏が、
永遠に続いているようだ

そんな明暗の曖昧さの欠片の寄せ集めが
街灯ひとつない世界の言い訳にちょうどよかった

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誰何

きみは綺麗だよ とぼくが言って、それできみがしあわせになることがすこしだけ悲しい。ダブルのアイスクリームの組み合わせに失敗して舌をだして笑った日、きみはぼくがどう見えているかなんてちっとも気にしていなかったのかもしれない。歯みがき粉味の水色がすきだったきみの横顔、きらめきとともに沈んでいく、思い出の底に眠る砂粒。ぼくはずっとワッフルコーンだけ欲しがって、きみと隣り合わせのパズルのピースになった気分で夏にいた。

晴れた日の空はきみの青い舌の色、キュイと鳴く自転車の錆は苦いチョコレート、ぜんぶ溶けだして、地球儀をぐるり一周させるスピードで消えたらいいのに。きみがどんな色で光っているか、きみも知らなければよかったのに。

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春を告げる白い華

君が居なくなってもう半年くらいかな
今は冬で寒くて寒くて敵わない
なんとなく君の部屋だった場所に足を踏み入れ
以前聞いたことのあった日記の話を思い出して
悪いと思いながらこっそり見ていた保管場所の引き出しから取り出す
最後のページに僕は全てを掴まれた

「春の雪」
3/29
僕は遂に見た
春を告げる白い華を
空はオレンジに染まり日が沈むのを待っているという頃
つぼみがチラホラと見えるだけの桜の木の近くを通りかかった時
まだ散るには当分時間がかかりそうだなぁと思いながら
空を見上げている僕の目に飛び込んで来たのは
白い花弁が空を舞う姿
それはノノックと呼ばれる花で
春近くで特定の条件を満たした1日だけ花を咲かせ次の日には跡形もなく散ってしまうらしい
きっとそれは誰も知らない景色だとそう思った
こうして僕以外が見ることが無いような日記だけに残すのはあまりに綺麗過ぎたからかもしれないし
僕の中の思い出にしておきたかったのかも
それは花と言うより華だった
僕の頬に落ちたその華はとても暖かく優しさを形にしたみたいだった
殺伐とした世の中で美しく咲いて綺麗に散っていく
散っているのに華はどもまでも綺麗で優しくて暖かい
僕はその景色を死ぬまでに見れた事を人生で最大の自慢にしようと思った
僕の中で永遠に


君が最後に記した日記だ
残念ながら日記は君以外の僕が見てしまったけど
君しか知らないこの景色を僕はどうしようもなく見たくなった
君が言う人生の自慢を僕も作れたら良いと思った

空はオレンジに染まり夜の訪れを待っている
君が見た白い華はこんな空を舞っていたのだろうか
そこに手を伸ばせば君が立っている気がした
春を告げる白い華に魅入られていたあの時の君がそこに
居る気がした



・・・・・・

Hollow Veil/nonoc

nonocさんという方のHollow Veilという曲を僕が勝手にストーリーにしました
短時間で作り上げたものですがもし良いねと思ったらスタンプを押して行ってください
僕が一人で悲しく喜びますので笑
という事で
このシリーズ気が向いたら続けます
多分その内曲のリクエスト聞いたりするかもしないかも
ではまた

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月光と恋心

夜を司るあの光に思いを描き込み
この空の向こう側のキミへ
届くといいな薄紅色

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普通

「普通」ってなんだろう?

そもそも「普通」って
誰を基準にしているの?

私は世間的に見ると
「普通」ではない恋をしている

でも君とふたりで
「普通」という言葉に勝ってみせる

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霧雨

体育終わって汗にまみれた私たちに
霧雨が落ちてきて
私たちは心地よかった。





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梅雨前線

空は同じだよとか
古臭い言葉で慰めないで
こっちはペンキみたいな青空よ
電波のむこうの雨の音
これが二人の距離の音

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にちじょう

つい数ヶ月前までは
名前がなかったただの「にちじょう」に
今では多くの人が名前をつけた
「当たり前の日常」
「いつもどうりの日常」
でも私はこんな名前のついた日常に
戻って欲しくない
なぜなら、
名前のない日常の方が好きだから。