空を見上げると
雲一つない青空が広がっている
新たな一歩を踏み出した君を
応援しているかのようだ
空を見上げると
黒い雲に覆われている
これからの不安を抱いていて
歩幅が小さくなっている君の心を
表しているかのようだ
空を見上げると
大粒の雨が降っている
悔しくて悲しくて
歩くのを止めてしまった君の心を
表しているかのようだ
空を見上げると
晴れているのに雨が降っている
誰かが言っていた
「この雨は誰かが大切な人を想って降らす"恋の涙"だよ」と
時々、心と天気はリンクするときがある
晴れているときに楽しくなるもある
雨が降っているときに気分が落ち込み、嫌な気持ちになるときもある
だから雨の日はいつもより相手に優しくしよう
いつかその優しさが自分に帰ってくるからね
ロウソクを年齢分だけケーキに立てて
ふーと消す。
電気の明かりがついて
僕は君に『生まれてくれてありがとう』と言った。
君の笑顔が僕の胸を刺す。
君の可愛らしさが僕の心を楽にする。
息詰った日に聞く声は僕らを心(しん)まで温めた。
ありがとう。生まれてくれて。
ありがとう。僕と出逢ってくれて。
君の笑顔に乾杯。
お誕生日おめでとう。
虚偽の報告をしたことを咎められて、あいつは例の植物園に送られた。
「あいつのことなんだがさ」
「何?また資金の横領でもした?」
「いや、あれは存外、剛毅なやつでさ」
「それこそおかしい。彼は石頭ってタマでもないだろうよ?それなのにその評価なのは、些か買い被り過ぎだと思うんだが?あいつには特技も、権謀術数の腕も無いぞ?」
「この話、本筋から外れてないか?」
「あいつの悪口で気付かなかったわ」
「なんという塊独。いと哀れ」
「独りぼっちは酷いんでは?」
「そうかもな。あいつにはすまないことをした」
人が人に出会う
恋をする
世界が輝く。
この不幸な時代は
それだけで美しく変わる。
君のことが好きなのに
そのことを伝えるとさ
きっと冗談だって言うでしょう?
君は思い悩むのに
私は何も出来ないなんて
私はただただ泣くだけなんて
ねえほんとに、
私じゃダメなの?
僕のメガネを外したら、
何かが変わって見えるかな。
そう思って僕のメガネを外したら、
みんながやさしく見えてきた。
他のメガネに変えたなら、
何かが変わって見えるかな。
そう思って他のメガネをかけたら、
みんなが怒ってるように見えてきた。
コンタクトレンズに変えたなら、
何かが変わって見えるかな。
そう思ってコンタクトレンズにしたら、
1人きりで寂しそうにしてる人を見つけた。
その子は泣いてるように見えた。
助けてあげたい。
話しかけて見たけれど、何も変わらなかった。
何をしても変わらなかった。
また他の「メガネ」を探すか。
どうしよう、
周りはみんな
当たり前のように友達がいて
LINEだって交換してて
なんか私だけひとり?情けなっ。
成り行きで友達なんて作れるかなって
甘かったかもな。
馬鹿だったかもな。
ほんと、これからどうしよう。
F氏の話をしよう。
F氏の友人のR氏が、まだ自分の店を持っていたころの話だ。
F氏は、優雅な日曜日の午後をすごそうと、美術館と行きつけの喫茶店へ向かおうとしていた。駅で汽車を待っている間、そっけないほどに素朴な花壇をぼうっと眺めていた。F氏は、大変花を愛していた。
汽車に乗り、橙色の切符を車掌に渡した。
花売りの少女から、百合を三本ほど買った。コインと共に、かばんに入っていたキャンディをひとつかみ握らせてやった。
F氏は、子供への思いやりにあふれた人物だった。
美術館につくと、中に入る前に、不慮の事故でなくなったある画家の慰霊碑に百合の花を供えた。
美術館の中は、日曜にも関わらず閑散としていた。F氏は、人ごみを好まなかったので、これは良かったと一人微笑んだ。
ゆっくりと絵画鑑賞を楽しみ、資料室で少し居眠りをした後、喫茶店へ足を運んだ。
F氏と喫茶店のマスターは、とても馬が合った。
ブレンドコーヒーと、小腹を満たすためのサラダを頼んだF氏は、マスターに美術館で買った絵ハガキを一枚やった。
マスターはそれを額に入れ、トイレの壁にかけた。
2人は小一時間語り合った。ピカソの天才的な才能について、最近始めたピアノの難しさについて、部屋を掃除したら出てきた数十年前の記念硬貨について。
夕日が沈みかけたころ、F氏は店を後にした。
その夜、F氏は家に帰らなかった。
それ以来、F氏の姿を見たものはいない。