愛されるために
嫌われないために
あるべき姿であるために
今日も作り笑いをする僕は
さぞ美しいことでしょう
そんなことを言う自分が一番忌まわしいのです
「正午って一日の半分って感じしなくね?」
「なんだよ急に、今授業中だぞ」
「しなくね?」
「いや『しなくね?』じゃねえよ。確かに言いたいことはわかるけどさ。急にどうしたよ」
「今日で今年ちょうど半分過ぎたらしいじゃんか」
「らしいね」
「でもあんまりそんな実感無いじゃんか」
「そうでも無いと思うけど」
「そこは同意しろよ」
「なんでだよ」
「まあとにかく『もう半分?!』って思うわけよ。半分も経った感じしないわけよ。なんでだろうなぁって」
「いや知るかよ。人それぞれだろ」
「そんなん言っちまったらおしまいだろ!」
「うわあ大声出すなよ怒られるだろ」
「そこ、さっきから喋りすぎだ、言いたいことがあるなら前に来い」
「す、すんませーん。ほら怒られた」
「で、これって正午が一日の半分な感じしないのと同じ理由なのではと思うわけよ」
「まるで聞いてねえな。まあいいや。それで?」
「朝、いくら起きるのが早くても学校とか仕事とか、そういうのが始まるのってだいたい8時から9時くらいだろ」
「うん」
「対して夜寝るのは早くても10時、遅いと日付を越したりする」
「つまり実際俺たちが活動してる時間だけで見ると正午はもうちょい前半よりってことか」
「ご明察」
「いや別に大して明察ってねえよ」
「それと同じことが今日という日にも言えるんじゃあないか」
「と言うと」
「俺ら今年の前半、活動してないじゃん?」
「あ―――……。自粛?」
「それ。つまりこの半年間、俺らは半年分の活動ができてないんだ。ゆえに、なんだか短いような気がする。イベントが無さすぎるんだよ」
「まあそれはコービッドくんに言うしか」
「キャラっぽく言うなよ。とまあこう結論づけるわけだ」
「なるほどね」
「ハインフタンアイッヘオン」
「待て待て待て食いながら話すな。てか弁当食うなよ。まだ25分も授業あるぞ」
「アインシュタインが言ってた相対性理論的なあれだよ」
「あー、あれか。素敵な女性の隣に座ってる時はーってやつ。あ、お前後ろ」
「そうそう、それそれ。要するにあっ、俺の弁と……」
「…………」
「…………」
「昼休み職員室に来なさい」
「お、おかえり。どうだった?」
「3時間くらい経った気がする」
僕はいつだってゆっくりです
今日もゆっくり歩きます
周りは速いけれどそれでも僕はゆっくりです
みんなは言う
「もうすぐ雨だ」
それでも僕はゆっくりです
殻があるから雨など平気
そう言って笑っていたら
笑われた
僕もみんなに合わせなきゃいけないのかい
速く走らなきゃいけないのかい
僕は「みんな」になりたくない
木から落ちてしまったりんごは
ジャムになる。
例え売り物にならなくなってしまっても
味は変わらないのだから。
売り物になるためだけの私達じゃない。
人間だって同じなんだよ。
貴方が思う様に
貴方の輝く様に
周りに左右されないで。
貴方の心の中を
もっと外に出して
貴方の気持ちに素直でいてね。
自分の気持ちに嘘をつく事は
一番悪いことだよ。
月の光が輝く夜に
波の音だけが響いて
僕を静寂へと導く。
海にできた光の道が
世界の裏側に続いている気がした。
闇に包まれた世界は
綺麗になる事を許しはしないが
間違いは消していく。
世界のウラガワとは
何なのだろう。
この世界が表であるならば
ウラガワはとても綺麗な世界なのだろう。
波の音だけが響く
綺麗な夜に
僕はそんな事を思った。
『今日は満月なんだな』そう一言つぶやいた。
アイデンティティーが壊れても
必ずどこかで日は昇る。
どこかで日が昇ったら
どこかで日は落ちる。
夜になったら
ひとりに感じるね。
でもね
どこかで同じ気持ちの人がいる。
例えばひとりになってる子がいたら
君だけでも味方になってあげてね。
味方がいることが何よりものプレゼント。
映画じゃない。
君が主人公の物語。
僕たちの物語はこれからだ。
趣味なんてものではないかもしれない、
僕の趣味。
人間観察。
授業中に、登下校中に、休み時間に。
ノートを取りながら、笑いながら。歩きながら。
観察対象No.1。
恐ろしく無口な人。
中学生とは不思議な生き物で、
誰かと話したがるらしい。
だがその人は誰とも喋らない。
その人の動きから音が消えているようだ。
真面目な人だ。
無趣味無特技であることを知り、観察する。
その人は何で構成されているのか。
観察対象No.2。
とある陽キャ。
陽キャには珍しく休み時間の読書を習慣とする。
そこに驚いて観察を続ける。
羽目を外しすぎない。
心優しさを持ち、真面目だ。
次の観察対象は誰だろうか。
塾の帰り、月明かりの下、一緒に帰ったあの人だろうか。