しとしと
みて、ほら
君の好きなあめのおと
ぽつぽつ
あーあ、また
僕の嫌いなあめのおと
君はあおぞらは嫌いかい?
僕は君とならどんなそらも嫌いじゃないのに
小さく笑って、私は絆創膏を持ってきた。
「諒さん、指出して」
へそを曲げた子どものような面倒くささを持っている彼は、なかなか指を出さない。そんなに切れているわけではないと思うけれど、今の彼に必要なのは、休憩である。
「諒さん」
語気を少し強めると、子どものような彼も子どもではないから引きを知っている。多少ぶすくれた顔ではあるが、おとなしく指を差し出す姿には笑みをこぼさずにいられない。
「この書類が悪いんだ。僕は悪くない」
「はいはい、誰も諒さんが悪いなんて思っていません」
今だけは、仕事のことなんて忘れてしまえばいいのに。
本当に、損をする人だと思う。これは、嫌味だ。
なんて、吐き出しようのない燻りを、小さいながらも確実に育てながら絆創膏を巻く。彼が怪我をしたのは向かって右人差し指、つまりは彼の左手人差し指だった。
「なんだか指輪みたい」
ちょっとだけ笑って吐いたこのセリフは、私なりの意地悪のつもりだった。一会社を背負う社長にあるまじきアクセサリーね、と。
それが伝わっていないはずはないのだけれど、一瞬の間をおいて、彼はさらに不機嫌そうに睨み、口を開いた。
「言っておくけど、それはキミの役割じゃないからね」
なんでもない休日昼下がり、そう言って書類整理に戻ってしまった彼に、私とコーヒーは置いてけぼりをくらった。
今日もライブは終わった。
さっきからこっちを覗いてくる女の子のことが、ライブ中ずっと気になっていた。
声を掛けてみようか。
そう思ったのも束の間、その人が僕のもとに近づいてきた。
とぼとぼとした足取りで、頼りない身長。
不安気な色が宿った黒い瞳がこっちを向く。
「あの、」
小さな声をかけた。
しかし、暫く経っても返事はない。
「あの!」
「あっ!!!!」
その人は驚いた。驚きたいのはこっちなのに。
すると、彼女は何やら大きなかばんから、ホワイトボードを取り出した。
そして、いそいそとペンで書き始めた。
暫く経って、ボードをこちらに向けた。
大きな丸い字で書いてある。
私、耳が聴こえないんです。
驚いた。
「あっ、えっ、そうだったんだ、、、あそうか。聴こえないんだよねごめん、えっとー、、」
僕はあたふたして、かける言葉に迷った。
すると、彼女はクスリと笑って、何か下に書き足した。
驚かせちゃいました?ごめんね。
笑いながら見せてくれた。
あっ、
この人と話がしたい。
(ちょっと、貸して)
身振りで示す。
そして、またその下に僕は書いた。
今度は最前列で観に来てください。
観客からの評価
数字
そんなの知らない。
聞きたくもない。
知ってるさ
自分がダメなやつだなんて
あなたより
よく理解してるさ
それでもダメなやつなりに足掻いてんだ。
それを否定なんてするなよ。
もう、
お願いだから
「傍観者」でいてくれ。
何も言わないでくれ。
自分だけでやりきれるから。
やってみせるから。
不意に聞こえたラブソング
HappyでLuckyなドーパミン
今の気分をさぁ、どうぞ!
急に流れたバラードで
BadでSadな雰囲気に
今の気分を一言で!