足を踏み出したが為 雨曝しに見舞われ
テキトーに笑って繕った顔がどうも怪しくて
所詮この世界を俯瞰したら
どうなろうがどうでもよくなって
早く見つけて欲しかったな
縋っても声一つ拾われない
あわよくば 終焉と心中したい
君も知らない知らない知りたくもない
残酷が眼に飛び込むよ
傍で笑ってる笑ってる助ける気も無い
誰かが手を叩いてご機嫌に
ーねぇ、克紀。
うち、深調よ。
そのひとことが変に彼を狂わせた。
彼は"カツキ"でも、"ミツキ"でもない。
名前は…
「…龍樹…だよな」
彼…もとい龍樹は俯きながら何度も己の名を繰り返した。
確かめる様に。
そして、たかが夢と記憶から削ぎ落とした。
「はよ起きぃな、真月」
知らない声が呼ぶ知らない人の名に、龍樹は反応していた。
半ば本能的なものだった。
「あぁ…」
「もう、デート中に寝るとか最低〜笑
早く次、水族館!」
ああ、俺は真月か。
そして龍樹…もとい真月は面識のない彼女の手を取り歩き出した。
それからは覚えていない。
覚束ぬ足のせいで酷い事故に遭い、意識を失った。
「…あ」
それから12日経ち、龍樹は目覚めた。
そこは見たところ病院の様だ。
彼はだんだんに記憶を手繰り寄せる様に取り戻し、その矛盾に気付いた。
『ま つ き』
誰だ。
龍樹は己に入り込んだ何者かを認識した。
記憶をもう一度しっかり噛み締める。
真月は何回確かめても消えなかった。
「あ、目覚めましたか。」
男が入ってくる。
服装からして看護師だろうか。
「看護師の羽山です。貴方は事故に遭…」
「な、名前は」
声に嫌な既視感を覚えて名を尋ねる。
「羽山…まつき。
真実の真に月…ムーンの月ですが」
こいつだ。
こいつが、