しょうがねぇ、だけじゃ何も始まらない
うるせぇ、の罵倒だけじゃ誰も倒せない
頭じゃ分かっちゃいるけれど、ね
傷が出来た分だけ強くなりました
アザができた分だけ強くなれました
血が出た分だけ僕は大人になれました
皮肉ですか?
生まれ持ったもので生きてる奴ってズルいよなって
お前が言うなよなってハナシだよ
愛したいのに愛せないこの身体でもなく
殴りたくても殴れない不透明な明日でもなく
ちゃんと実体のあるお前に、アンタに
てめーに用があるんだ
生きたくても生き足りない心臓でもなく
吸いたいのに吸い切れない酸素でもなく
見えてんのにタチの悪いお前に、アンタに
貴様に用があんだ
あの日の日付変更線が、私の心に居候している。
絵本がこつんと落っこちて、喚いたあの夜から
寂しさをたぶらかしたあの夜から
繋いだ電話、無言のままだったあの夜から
指先でゼリー掬ったあの夜から
壁と向き合って宥め合ったあの夜から
心が
心が、
こころが、
お前には分かってほしくねぇほど痛かった夜から
私は
何も変わっちゃいないんだと
線が告げている。
絶対に、と不安定な形容を添えて
「絶対に変わらないこと」を
敢えて変化と呼ばせて
あたかも特異であるかのような
そんな
狡い私が
未だ
あの何月何日かに取り残されている。
思わず埋めそうになるその胸は
誰を懐くためにあるんだろう
ゴールで先回りして待ってるから
どうか迎え入れて欲しい
下唇を食むにやけ方は
照れた時だけの得意技だから
思い人の前だけだよ
これはヒントだから
こっちおいで。
明日はダメになるかもしれない
今度こそ明日はダメになるかもしれない
何度も繰り返した想像
気持ちが溢れて吐いている
気持ちが抑えきれず叫んでる
教室を飛び出した
「正式な主従じゃないから、敬意を示したり命令を絶対に聞いたりする必要もないだろう?」
そう言って使い魔は少女の後を追った。
少女はなら、と話を続ける。
「私だって容赦しないわ…お前が貴重品だろうと年上だろうと、あくまでお前を”武器”として使う」
…まぁ一応”借り物”だから、死なない程度に加減はするけどね、と少女は付け足した。
「分かったわね、”ナツィ”」
「ちょっと待て何そのあだ名」
少女の言葉に使い魔は思わず突っ込む。
少女はふふっと笑った。
「別に良いじゃない、フルネームじゃ呼び辛いし」
おあいこで、私のことは”グレートヒェン”と呼びなさい、と少女は言う。
「”マルガレーテ”だから”グレートヒェン”…魔術の世界ではそれで通ってるのよ」
少女はそう言って後ろを見やる。
少女の後を追う使い魔は、嫌そうにあーそうですかとだけ答えた。
その様子を見た少女はよろしいと言わんばかりに微笑むと、また前を向いて進んで行った。