「あと、あちこちを転々としていた方が、私を追う者達を少しは撒くことができるでしょう?」
一応拠点になる場所も時々変えているのだけど、まだまだ私を狙う人も結構いるみたいでね…とグレートヒェンは苦笑した。
ナツィはふーんと言うだけだった。
「じゃあ聞くけど」
今度はグレートヒェンがナツィに尋ねた。
「どうして昼間、私を助けたりなんかしたの?」
お前も人間が嫌いって言ってる癖に、とグレートヒェンは嫌みっぽく笑った。
「…」
ナツィは気まずそうにそっぽを向いた。
グレートヒェンはナツィの顔を覗き込む。
「私の事なんてどうでも良いと言った割には…」
「…した」
ナツィはグレートヒェンの話を遮るように何かを呟いた。
グレートヒェンは思わず目をぱちくりさせる。
ナツィはすごく嫌そうに視線をグレートヒェンの方に向けて言った。
「…魔が、差しただけ」
それだけ言ってナツィはまた顔を膝に埋めてしまった。
「まぁ、家族の内の誰かが私の事をよく思っていなくて、自分の傍から排除するためにこんな事をしたのかもしれないけどね」
そう笑った後、グレートヒェンは真顔に戻って話を続けた。
「…そういう訳で、いつしか私は人間をくだらないもの、どうしようもないものとして見るようになってしまった」
どうでも良い事にこだわって、どうでも良い事で大騒ぎする…とグレートヒェンは呆れたように言う。
「…そんな人達にとって、私の気持ちなんてどうでも良い事でしかならなかったのでしょうね」
そう言ってグレートヒェンは冷笑した。
「だから私は人間が嫌い…と言うか、あまり好きになれない」
そういう意味ではお前と同じようなものね、とグレートヒェンはナツィの方を向いて言った。
ナツィは、そうかい、とだけ答えた。
「…じゃあ、何でお雇い魔術師なんてやってるんだよ」
人間が嫌いとか言ってる癖に、とナツィは嫌みたらしく聞く。
それは…とグレートヒェンは面倒臭そうに口を開いた。
「そうでもしないと生きていけないからよ」
一応私も人間だしね、とグレートヒェンは答える。
久々のデジャヴ 痛いの痛いの飛んでかない
明日が晴れで、良い天気になるのなら
滑って、転んで、血を流して、嗚咽して、
「もう嫌だよ」って叫びながら泣いてみたい
3等星にすらなれない ちっぽけな青い魂
見つめていたいのに、目を逸らす。
あなたと目が合ってしまうのが怖くて。
私のこの視線は泳いでしまう。
あなたみたいにまっすぐ前を見ていたい。
貴方の睫毛が下がった姿が
浮世離れした美しさなんて
よくある見方で溺れている
溜息の微睡みなんですか、
吹き飛ばしたいのですか、
こんやもベッドに沈んでは
心だけが浮いてしまうけど
奴らは、認識されるほど存在を確かにする。恐れられるほど力を増す。
目を瞑れ。耳を塞げ。無視を決め込め。
それが存在していないかのように振舞い続けろ。
オカルトの話? いいや、いじめの話。
キスをしてなんて言ってないし
抱きしめてなんて言ってない。
手を握ろうともしてないし
付き合ってなんて一生言わない。
会いたいだけなのに
叶わない。
君の手を掴んだ夢の中で
余裕たっぷりに微笑みかけた私は
寒さの痛い空の下
大好きな君に
「この手は何?」
なんて目も合わせられずに
可愛くないことぶつけてる