わかったことはわかってなくて、
諦めたことだけがわかったことになるの、
という切ない話をしようか。
ぴく、と彼は反応する。
彼はあまり見られたくないのか、抱えている濃い灰色のネコをこちらから見えないようにした。
「ていうか、フード…被っていないんだね」
彼がいつもはパーカーのフードを被っているのに今は被っていない事に気付いたわたしは、何気なくそう言った。
彼は言われるまで気付かなかったのか、慌ててフードを深く被った。
「…」
いつものようにフードを深く被ったレイヴンは、無言でこちらを見た。
冷たい目を向けられて、わたしは凍り付いたように動けなかった。
暫くの間路地裏に微妙な空気が流れた。
…少しの沈黙の後、何を思ったかレイヴンはまた向こうを向いて歩き出した。
「あ、待って!」
傘…と言いかけた所で、彼は立ち止まった。
「傘、ないんなら入れば?」
ネコもいるし…とわたしは続ける。
「…」
彼は沈黙したままだ。
無視しているのかどうかは分からないが、こうなるのは何となく予想できていた。
嫌いな奴と帰るのは、誰だって嫌だろうし。
でもこの強くなり始めた雨の中、傘なしで帰るのはちょっとかわいそうだった。
鉛を全部打ち込んで最果てまで飛ばして
それで全て満足して
ああ もうこれでお終いにしよう
僕らは疲弊し戦えない
後は君が花を捧げてくれるのを待つだけだ
君は僕を一人にするんだね
君は僕を愛せないみたいだ
だから僕も君を愛さない 愛せない
僕を独りにしないでおくれ
淡い夢を見た
遠い遠い海だった
君はその海みたいに透けていて
そのまま奥に沈んでいった
歩けない地球儀みたいに
全てを丸めて飲み込んだ
国道508号線を駆け抜ける
狂った世界に狂った僕
青いトマトに君の真っ赤なウソ
狂った未来に追い付くんだ
エイトビートを嫌う君に告ぐ
睨んだ地球は僕に告ぐ
「シンプルイズベスト!!!!」
泣きたい心と泣けない僕に贈る
「大丈夫」、なんて
無責任な言葉
「君は大丈夫」だなんて
何も知らないくせに
でもね
君は大丈夫だよ
今がどんなに辛くても
明日がどんなに不安でも
この先どうなるか分からなくても
君は、大丈夫
ホントは大丈夫じゃあなかったとしても
それでも、大丈夫
大丈夫だよ
心の底からそう思えるんだよ
間違いなくそうだと言えるんだよ
君がそう思えるかどうかでなく
それが事実なんだ
それでも信じられないって言うなら
コップ一杯のお水と
白いお皿に愛を乗せて
ね、ほら
もう大丈夫
じきに朝が来る
怖がらないで
大丈夫、僕がいるよ
大丈夫、大丈夫だから
わかった?
文字だけが留めてくれて心の白羽
ゆっくり夢となってどうにか融かして
どうにもあの子のささくれが欲しいな
ぴって取ったら血が出ちゃうし
放っといたら痛そうだし
まだ乾燥の季節だし
あんなピンセットがあればな、とか思う
どうして嘘はつけないほど純で
こんなこと考えてんだろ
あそこに戻り蘇る無言の世界線
またすぐ私を刺して こうにか創って
今頃あの人誰を知ってるの?
未だ無知でいたいというのにあの人は
きっと、きっと、 ああ何も知らないのね
唯一がいいから知っていたかった
わからないでしょ、多分。
パッと忘れるとかできないし
縋ってる自分は怖いし
珍しく心底嫌だな本当さ
疑問ばっかでなにも出来ないの馬鹿だな
きっとそういうところもあって今があるわけで。
ずっと夢みててアラームも聞こえなくて
ただ熱烈に愛していた
やっぱり愛されるのは敵わなかったらしい
どうか、どうか、いつか、何故。