叶わない夢だけ綴って
過去が喉の奥に残響
「来世は…」と今を捨てた
きらきら輝く人達の隙間から
努力が零れ落ち僕を押し潰した
いつまで平気なフリして
嗤ってればいいのだろう
私たちが幼稚園に行くと、誰からともなく園庭に飛び出してきて貴方を囲んだ。アイカちゃんは強引にみんなを押しのけ、嬉しそうに貴方に抱き着く。そのとき、ちらっと隣の私に視線を流すのが、なんとなく嫌だった。
それでも私が貴方と幼稚園に行くのを喜んだのは、去り際に、その指輪のいっぱいついた手で頭をなでてくれるからだった。指輪のごつごつとした感触さえも愛おしく、貴方のことがより一層大好きになった。
そして何より、私が知る限り貴方は、私以外の子の頭を撫でなかった。なぜかは分からなかったけれど、自分は特別なのだと思えて嬉しかった。
「ねえ、律ちゃん、ちょっとずるいと思うんだけど」
みんなが砂遊びをしている中、アイカちゃんは私を一人呼び出した。もっともらしく、わざわざ園舎の裏に。
「なにが」
彼女の腰に手を当てる仕草がなんとなく気に障り、分かりきっていることを聞いた。
「蓮と一緒に幼稚園来たり、頭撫でてもらったり。ずるい、ずるいよ」
目に涙を浮かべるアイカちゃんは、悔しくも今思い出せば可愛かった。
「そんなこと言われても困るよ」
聞こえないように、小さく呟いた。
「とにかく、蓮とお似合いなのはアイカなんだから。蓮はアイカと結婚するの」
アイカちゃんは言ってやったと笑っていたけれど、私の頭は、砂場に残してきたお気に入りのスコップがとられてはいないかという心配でいっぱいだった。
「そういうことだから」
アイカちゃんはフリルのついたスカートを揺らしながら駆けていった。
「結婚…!」
改めて彼女の言葉のダメージを受けたのは、お弁当を食べているときだった。
きっとあれが、初めて人を憎いと思った瞬間だった。周りが呆れるほど、のんびりとしていておおらかな子どもだった。そのせいで、要領の悪いことをしてしまうこともしょっちゅうだった。
でもこの時、私は確かにアイカちゃんを憎んでいた。
恋する乙女心というと聞こえはいいが、実際人を憎んで羨んで、愛する気持ちはもしかすると半分もないのかもしれない。と言っても、それはある程度成熟した人間の話だ。当時の私はまだまだ純粋だった。貴方を愛する気持ちだけでできていたといっても過言ではない。そう思っていた。
身体に痛みを加えたところで
心の痛みがまた疼くだけ
意味ないことしてるな、自分
弱い自分が情けない
つい数時間前まではあったのに、
どうして今はないんでしょう。
1度落とせば容易には戻ってこない。
なんででしょう。
呼んだら戻って来てくれたら楽なのに。
君のスマホに残る私の痕跡は
きっと周りの誰よりも少ないだろうから
はるか遠くで地面をふみしめる君が
一番最初に忘れるのは
私だ
久しぶりに会うかつての仲間
それなりに話すネタはある
と言ってもそれはそれなりに話す間柄に限られる
そうでも無い人のプライベートなんて聞く気も起きないし、なんなら遠慮したいくらいだ。
だいたいみんなはそんなところだろうか
その場しのぎで会話に参加してきた僕の存在はこういう時に非常に弱い
どこの会話に入ることも出来ず、フラフラするのが関の山、気を利かせてくれる人もいるにはいるが厄介なのはプライドである。情けを受けれないくだらないプライドがこの矛盾を加速させる。
おかげでどんなに楽しい場でも疲れてしまう
こんな僕の存在をそのまま認めてくれればどんなに楽だろうか
全部甘えなのはわかってる、それでも望まずにはいられない…
怖いんだ存在価値を見つけられないのが
いつか先輩に聞いたことがある
「僕はいい後輩になれましたか?」
答えは返ってこなかった
別に答えを求めてたわけではなかったが、それ以来その質問は答えのない問いとして自分の中で膨らんで行った
その問いを抱えながら自分も後輩を迎え、先輩と呼ばれるようになったが、先輩と呼ばれるのはどうも慣れなかった。おそらくどこかに後輩気分が抜けてなかったんだろう。それでも後輩と過ごす時間はあまりにも楽しく、そしてあっという間だった。
引退まで来ても抱えた問いに答えは出なかった。
先輩として後輩を見ることで確信したのはこの問いに明確な答え、正解がないということだけ、肝心の答えはモヤがかかったみたいで全然見える気配がない。いつしか部活の記憶とこの問いは1括りになっていた。
後輩が先輩として活躍する姿を見る立場になりその活躍に刺激を受けるというよりも心躍ることが多くなった。おそらくようやく真の意味で先輩になれたのだろう。
そうしてついに後輩の引退を見守る日を迎えた。
別に先輩ヅラするつもりなんてないけど後輩の演奏を見てると何故か彼らが入部した頃の姿が重なる。この感動は今この場の自分以外の誰にもできないものだろう。
そんな感慨を感じながら彼らの演奏は盛り上がりを見せ展開されていく。曲の情景、後輩たちの顔がありありと目に焼き付いてく。曲間、目が潤んでいることに気がつき、思わず目を瞑る。その視界の先で先輩が待ってたような気がした。
先輩にこの感覚を話したい、そう思った。
自慢とかじゃなくて自分を見守ってくれた感謝を示すにはこれが1番な気がしたし、先輩としか共有できない何かが胸に溢れているのを感じていた。
しばらく時間が経って
“あれがずっと抱えてた答えだったんだ”
ふとそんな気がした。
あの時、初めてその領域に達したような
「2年もかかったけどようやく答えが出たよ」
誰にともなくそう呟いた。
常に正直に生きましょう。
常に誠実に生きましょう。
皆があなたを信用し、その発言を信頼するでしょう。
あなたが嘘など吐く人間じゃないと皆が確信したそのタイミング。そのたった一度に全てを込めた、一世一代の小さな嘘を吐いてやりましょう。
きっと皆があなたの嘘を信じることでしょう。