ネロは訝し気な顔を向けた。
「そ、それは…」
恵梨さんの目が泳ぐ。
「それは?」
ずいっとネロは恵梨さんに近付いた。
「…彼とは遠い昔会った気がして、それで仲良くなれたら良いなって」
「何だそりゃ」
その答えを聞いて、ネロは拍子抜けする。
「なぁ黎、こいつと会った記憶ある?」
レイヴンとしての記憶含め、と師郎が黎に尋ねる。
黎はよく分からないとでもいうかのように、首を横に振った。
「えーそんな~…覚えてないんですか~」
たった数百年前の話じゃないですかーと恵梨さんは落胆の声を上げる。
「ずっと前のわたしの異能力の持ち主は大きなお屋敷の使用人で、君は…」
「もうよせよ」
恵梨さんの声を遮るようにネロは言った。
「アンタ、異能力者としての記憶に囚われ過ぎなんだよ」
『君がさ、今日、死にたいと思った瞬間は、昨日誰かが生きたいと思った瞬間なんだよ。じゃけぇ、何を言っても考えようが君の自由だけど、命に関する言葉には気をつけな。生きるってそう簡単なことじゃないんよ。君が知らんだけで、もっとずっと遠くにはさ、生きたくても今日明日を生きれないかもしれん人がいるんじゃよ、そんなことを考えられてる暇すらない人もおる。ええか、A、
言葉は軽い、だが、言の葉は重い。
じゃあ、ほら、これから、君がどうするか決めたんなら、行きな。君を待っている人がおるよ。』
楽しく話していたかった。
楽しい場所であってほしかった。
深く関われば関わるほど、それは難しいらしい。
キミだけで精一杯だったのにキミもだなんて。
それならば…
しばらくの間はさようなら。
なんてできたら楽なんだけど、それはちょっと難しくて。
だから私はとことん冷たい人間に
なるしかないのです。
現実を変えることに怯えてばかりいた
今 私に残された時間は
後どれくらいなのだろう
ずっと ずっと
このままでいたいのに
暑くて、痛くて、寒くて
目が覚めた
ぐちゃぐちゃ感情が渦巻いて
心が体が
いきようとして叫んでる
解熱剤はすぐに効かなくて
時間はゆっくり進んでいく
だいじょうぶ?
と、聞いて欲しいのは
きっと一人が辛いから
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
毛布にくるまって
呪文のように唱えたら
あっという間に時間は経って
ほらね、本当にだいじょうぶになった