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「雨の音より強い鼓動」

はじめて映画館に行った日、
音は身体を伝うのだと知った。

きみと話した日から、
きみ以外が騒音になった夏を。

あなたの音を頼りに また会えますか、
僕の全身にはきみが響いているのだけど。

1

りせっと。

青くて白いいちごが在りました。


誰にも摘まれずに、まだ肌寒い、つんとした風の中を。
孤独そうに、楽しそうに、揺れていました。


ある日そのいちごは、「言葉」と出会いました。
それは、幸せのカタチになりました。
それは、慰めの香りをまといました。
それは、心に波をたてました。


「言葉」の向こうには、沢山の人がいました。
その人たちの世界に触れて、
はじめて「世界」を知った気がしました。


世界は 広いのだと 知りました。




いちごは少しずつ色付きました。
自分の「世界」を創りはじめました。

自分を見つけられた気がして 嬉しかった。




でも




「世界」は広すぎて 迷いそうで 酔いそうで

ちょっと重かったようです。

掴めない理想を追ううちに、
現実の苦さを飽和する力を失いました。



いったん、りせっとしよう。
頼りない蔓に縋りながら揺れるいちごは、そう決めました。

だから。
しばらく、りせっとのおじかんです。

すぐ終わるかもしれない。
まだまだかかるかもしれない。
ひとまず、りせっとのおじかんです。



摘まれるまでに、帰ってきたいなぁ。
ほんのりピンク色したいちごは、そう夢見ながら、
今日も揺られています。



りせっと。ぴぴぴ。



☆ ★ ☆ ★ ☆

0

 

雨には雨の時間がある
朝も昼も忘れ薄墨に霞む
唸る雨音は螺旋の相か
冷涼な湿度が暖光と混じる
雨に鎖された雨の時間を
知覚できるのはその多寡程度か