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夏の始まり

梅雨。それは夏の始まりである。ジメジメしてて、気分は最悪だけど。「あー、雨降ってる。」なんて朝から考えながら。「お母さーん!学校送って〜」「はいはい」なんて会話を今日もしながら学校まで車で向かう。学校に着き、母と別れると傘をさして歩く。学校が終わると、外は晴れていた。水がしたたる葉っぱや紫陽花の花。空には虹がかかっていた。空を見上げながら、イヤホンをさし、ゆっくり歩く。梅雨は嫌だけど、こんなに綺麗な空を見られるのなら梅雨も悪くないかもね。

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神様曰く、お好きな方をどうぞ

のんびり歩いたら死ぬほど長くて
全力で走ったら死ぬほど短い

人生って、多分。

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見える人々 その①

前回から翌日。今日の冒険は久々に深夜徘徊じゃない。午後5時頃、まだまだ周りは明るいけれど、適当な言い訳をして家を出て、昨日の廃墟を目指す。
といっても、廃墟って言い方はちょっと正確じゃない。あの男性にさらわれた地点から30mくらいの場所にある古い3階建てのアパート。あんなにひどい状態だったのは、あの部屋のあった3階の1フロアだけだったんだから。
そういえば、あの場にいた人々のうち、誰の本名も知らないな。今どきはみんな個人情報を隠して生きているんだろうか。何かと物騒な世の中とはいえ、寂しいものだ。
階段を駆け上がると昨日出た部屋の前に、中学生くらいの子供が立っていた。見覚えの無い顔だ。もしかして、彼女が例の……。
「はじめまして、新入りの人ですか」
「うぇ、あ、はい、どうも」
突然声をかけられて、変な声が出てしまった。
「はいどうも。ベルを押したんですけど、誰も出てこなくて……」
「え、ここ電気通ってるんすか」
「はい。普通に電気もガスも水道も通ってますよ」
「どう見ても廃墟なのに?」
「どこがです?」
どうにも話が嚙み合わない。
「あん、流石に学校組は来るのが早いな」
いつの間にか、昨日のあの男性が、中身の詰まった重そうなエコバッグ片手にすぐそこに立っていた。
「こんにちは、早く開けてください」
こちらの少女はだいぶ慣れた様子だ。
「待ってろ、今片手が塞がってるからやりにくいんだ……」
男性はしばらく片手でポケットを探り、やっと鍵を取り出した。
「あの、ここって……」
男性に尋ねようとして、名前が分からないのでどう呼べばよいか分からないことに気付いた。けど、男性は私の求めている答えをくれた。
「ん、俺の家だが。まあ、ほとんど能力者の溜まり場状態だがな」
「こんなところに住んでるんですか……」
「え、変なところあるか? 家具が無いことについて言ってんなら、それはただ買い揃えるのが面倒だっただけだぞ」
やっぱり話が噛み合わない。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 11.ゴブリン ⑦

色々考えながら走っていると、駄菓子屋の軒先が見えてきた。
もうすぐ目的地だ。
これで安心…と歩みを緩めた時、急に路地の角から人が現れた。
「よっ」
その人物はわたしに気さくに笑いかけてくる。
「え」
わたしは思わず絶句した。
それもそのはず、目の前に現れたのはさっきから度々わたしの前に現れているあの少年だったのだ。
「どこへ行くかと思ったら、駄菓子屋に行こうとしてたんだな」
いや~見失うかと思ったよ、と少年は笑う。
「それにしても随分と逃げるねぇ」
ま、俺からは逃げられないけど、と少年は言った。
「何なのよあなた…」
わたしは思わず呟く。