こんなに君を好きだったなんて気づかなかった
手を伸ばしても届かない君が
目が合う度に声をかけてくれたことが
どれだけの奇跡だったか今更わかってしまう
私を呼ぶその声が心の奥を甘く痺らせた記憶が
私を揶揄うその仕草が
戻ってこない日々に閉じ込めた君への思いを
こんなにも溢れさせてしまうのだ
1往復で2画面、長い長いお話をしている。
裏拍でクラベスが響く。鼓動が走り出す…
どうやらあなたはちょっと昔、
クラリネットを吹いていたらしい。
俺は昔パーカッションで…と返し、
ただ待つ、あなたからの返事。
「楽しい気持ちは、誰かといると生まれるもの」
"あの子"の言葉を借りるなら、
その"誰か"はきっとあなただ。
ここは愛知のコンサートホール。
俺はマリンバを鳴らす。1stがあなたって気づく。
プレストで鼓動が走る、弱拍でクラベスを鳴らす。
年老いたゴールドの声が響いている────
夢の時間は終わった、午前五時の寝起き頭。
緩んだアンブシュア、返事をくれたあなた。
駅のホームに伸びる影は一本
頬に光るのはなに?
あぁ、また思い出しちゃったな
脳裏にはあの日のこと
「今日は一緒に帰ろうか」って
逆方面なのに電車に乗ってさ
私の最寄り駅まで20分
いちばん濃くて いちばん甘かった
『さんぶんのいちじかん』
ハンバーガーを食べてるのは一人
喉につっかえているのはなに?
あぁ、また考えちゃったな
脳裏にはあの日のこと
「今日はハンバーガー食べよ」って
珍しく私から提案してさ
食べ終わるまで20分
いちばんの味で いちばんゆっくり食べた
『さんぶんのいちじかん』
この街には
数え切れない位の思い出があって
どれにも必ず「君」がいて
笑ってるんだ 勘弁してよ
何も覚えてないようで
何もかも覚えてたみたいだ
この街のあらゆる所に栞が挟んである
続かない物語なのにね 勘弁してよ
椅子に座ってため息ひとつ。
この心の痛みはなに?
あぁ、昨日からこんな感じだ
脳裏には昨日のこと
「私の方が」「僕の方が」って
いつもより感情的でさ
話し終わるまで60分
いちばん長くて いちばん泣いた
『こんないちじかんなんて、、』
何が悪かったんだろうね
どこでずれちゃったんだろうね
この街で見つける私たちは
どれも青くて澄んでるのにさ
この街には
背負えない程の思い出があって
どれにも必ず「幸せ」があって
つらいんだよ 居られないよ
何も忘れたくないよ
何もかも忘れられないよ
栞を全部集めて
始まらなかった物語に出来ないかな
初めて入ったこの街の珈琲店
私だけの思い出の栞を挟んで
からんころん、かららん。
ふざけんなよ、桐谷君
その憤りは暴走するのに十分すぎた。
なぜ喪黒闇子が桐谷青路を好きだなんてシナリオが生まれるのか、今の目的は橘や小橋に対して復讐する道義を作ることだと忘れたのか?それとも…
しかしそれは考えたくなかった。
自分の体に裏切られるなんて馬鹿な話だ。
いくら彼の意思があるとしても…
いやむしろ彼の意志がある以上復讐の達成は最低条件のはずだ。その条件を用意するために体を入れ替えたというのに…
…
もういい…
…
私は手に入れたいものをもう我慢しない…
…
それが…たとえ…
…
自分の体を捨てることになっても…
…
いや…はなからあんな体願い下げだ…
そんな思考の果てで気づいた時には橘に話しかけていた。
そこで提案するのはもちろん…
連絡先の交換
正直鬼門ではあるが裏切られるくらいならいっそ壊してしまう方が目的に近いゴールになる。
そう、私はどうなったっていい
ただ私を苦しめた奴らが地獄を堕ちるのが見たいんだ。
それがたとえ自分の体であっても…
私を苦しめるものは許さない!
そう決めたの…
to be continued…