「…ちょっと、行ってくる」
そう言ってナツィは屋上に続く階段へと向かった。
「あ」
待ってよとキヲンは止めようとしたが、ナツィは気にすることなくその場を後にした。
「…」
暫くその場に微妙な空気が流れた。
しかし、ピスケスがぽつりと呟いた。
「私達も行くわよ」
え、と露夏はピスケスの方を見る。
「行くって…」
「決まってるでしょう」
ピスケスはティーカップをテーブルの上に置く。
「アイツを追うのよ」
そう言ってピスケスは立ち上がった。
「幸せ」と「辛さ」
ってきっとすごくギリギリの距離なんだと思う。
辛さの先には幸せになる権利が待ってて
幸せの後には辛さを感じなきゃいけない時が来る
それこそ棒1本で区切られたようなものだ。
もし今、「辛さ」に嘆く人が目の前にいて
伸ばした自分の腕が
その人にとって棒1本にでもなれるなら
どんなに幸せなことだろうか…
俺にはなんだが不気味でならなかった
あの日、青路が一日だけ休んで復帰した日
えも知れぬ違和感をまとった奴の姿、そして奴の胸ぐらを掴むクラスの陰キャ、喪黒闇子。
全てが自分の理解を越えた世界であることだけが突きつけられる。心は…楽しみに震えた。
ふふっ、そうだ、こうすればもっと面白い
「おいおい、陰キャが青路に何の用だよ!」
そう言って蹴り飛ばす。
さぁ、何が出る?
「痛…何すんだよ!」
ショックだ…逆上もしない…反撃もない…
しかしその後の言葉は予想外だった。
「健!」
…!?
「あぁ?クソ陰キャが気安く名前で呼んでんじゃねーよ」
あまりの驚きに煽ることも忘れ、怒りを表にしてしまった。呑まれるな…俺は…
高みの見物を許された存在だ…
そう在らなければ…ならない…
「まぁまぁ」
橘のゴングだ。やり足りないが、今の深入りは危険と判断し制止を受け入れた。
その褒美とばかりに昼にチャンスが訪れた。
『青路が喪黒闇子に何かをした』
これほどのチャンスを逃す獣はいない。
ここぞとばかりに悪口でまくし立てる。これは序章だ。
橘が止めてからが本章…
しかし妙なのは青路だ。
橘が俺の悪口を止める。いつもならここで橘と共に相手に寄り添う素振りを見せるのが青路なのだが…
彼は今回、相手に追い打ちをかけた。
さすがの橘も驚き、その場を収めようとした。
なんだ…?何かが…おかしい
俺のシナリオから少しだけズレる。
まるで誰かがこのシナリオを利用してるような…
もし…橘だとしたら…
「ねぇ、闇子ちゃん連絡先交換しようよ」
その矢先で橘が動いた。
なぁ橘、お前は今何を企んでいる?
to be continued…