可愛いって思ってもらえるのは
君が近くにいるから
そんなナマケモノだから
君には選ばれなかったね
いいよ
いいよ、
いいんだけれど、
どうか見て欲しかった
君を見つけて
考え方も習慣も好きなものも増えたの
今日もお風呂に閉じこもる
リンスの待ち時間はずっと考えてるの
明日どんな顔をしてどんな髪型で君に魅せるかを
きっと見てすら貰えない
成分が浸透する1分だって構って貰えない
それでもいいんだよ
いつか“かわいい”に君が介入しなくなるまで
そんな日も来ないけれど
瞳を揺らしながら潤していくの
可哀想だけれど
この濃い日々こそ。
空をつかむ
掠める手に知恵袋
肩を落とす人々
気付けるラッキー
それこそが幸せだと
わかりました、頑張ります。
気を張り積める、いったいいつからだろうか。
はい、はい、すみません。
虚ろな言葉を口から放つ。
その言葉には意味がない。
理解され得る意味は持ちえない。
全ては保身、
他人は言う、無理なら無理と言えば良い
私は問う、其は気を害すか?と、
害さぬはずもない
自身の枷を自らはめ、
その鍵を、口虚に捨てる。
枷を幾重にも重ね身動きをとれるはずはなく、
結果、すべてのものが朽ち果てるのみ。
ゆえに、心さえ失われる。
ベルリン中央駅を出て最初の停車駅、シュパンダウに着いた
俺たちのボックスは4人掛けなのでさらにもう2人と相席することは分かっていたので、誰が来ても良いように荷物の位置を調整した
すると、中学まで一緒だった幼馴染が乗り込んで来て、俺の向かい側に座った
しばらく談笑していると、向こうは戦後のドイツを研究しており、実地調査でシュパンダウ戦犯刑務所跡を視察しに来たことを知った
だが、問題は俺の彼女だ
「難しい話、しないでよ〜」と言って俺に泣きついてきた
すると、旧友から「スキー教室の余興で歌いまくったアレの舞台、行ったのか?」といきなり質問が飛んできた
「モスクワだろ?行ったよ。彼女と2人で、な。ただ、2人ともその前に観光したペテルブルクでヘロヘロになってオンボロの寝台列車乗って一睡もできないままだったからまともに観光できなかったけど」そう言って頭を掻きながら笑うと、「お前に彼女できるなんて凄いな。」と返された
すると、彼女が「写真撮影が上手で、それでいて複数ヶ国語を操れる、更に私が好きな日本史、特に1番得意な幕末や明治の話でも盛り上がれるという、まさに私には勿体無い最高の彼氏です」と言ってきた
「今言うなよ」と言って呆れた感じを出すが、流石は旅を同じくしてきた彼女と中学の3年間で苦楽を共にしてきた仲間には俺が照れていることがお見通しだったようだ
昔話や近況報告をしていると、デュッセルドルフを過ぎた
荷物を纏めていると窓の外には中央駅へ入る手前の鉄橋が見える
「見ろよ、このラインの水面に映る夕焼け、照れた時の君そっくりだ。見ているこっちがうっとりしてしまう程鮮やかな赤色だ」と言って彼女に呼びかける
その場の全員が頬を染め、その後笑い出す
「ロンドンでアイツに会うんだろ?アイツによろしく言ってくれよ?」「ああ。俺もアイツもお前も3人幼稚園の頃からの付き合いだからな。そっちも元気でな。式の時には呼ぶよ」と言って笑い、分かれる
ブリュッセル行きが接続取って待っていてくれているので、急いで駆け乗る
奇しくも、俺がかつて乗ったブリュッセル行きICEと同じ時刻にケルンを発車する列車だった
橙に輝く一筋の光がガラス屋根を貫く中、列車はベルギーの都、ブリュッセルに向け走り出す
ハンガリー大使館の角を右に曲がり、フランス大使館のあるパリ広場まで来ると、目の前にはブランデンブルク門が見える
ブランデンブルク門を見て思わず「『Einigkeit und Recht und Freiheit 』、『統一、正義、そして自由』か…ドイツがなぜその3つを大切にしてきたのがよく分かるなぁ」と呟く
すると、彼女が「日本史は分かるんだけど、ヨーロッパ史が苦手だから、ドイツのことは分かんない…誰か教えてくれないかなぁ」と呟く
「簡単なドイツ史なら分かるんだがなぁ…俺は恋人と付き合って日が浅いからまだまだ彼女のこと知りたいんだがなぁ」と言ってわざとらしく返す
すると、彼女も俺も顔が赤くなり、「東一色だな」「そっちもね」と言って笑い合う
しばらくして、スマホが鳴る
電話に出るとかつてロンドンで再会した幼馴染から「君は今、ヨーロッパなんだよね?僕はかつて君がロンドンに来てくれたルートで5日ほどロンドンに滞在してヨーロッパ周遊する予定だけど、もしロンドンで会えそうなら会わないかい?」と誘われた
「ヒースロー到着、そっちは何時?こっちは明後日ユーロスターでセントパンクラス入りするんだ。彼女と2人旅さ。あっ、でも、ホテルは俺が昔泊まったちょっとお高い所」と言うと「現地時間で日付変わる直前、ホテルは僕と同じだね。あっ…これから搭乗だから切るね。」と返ってきた
彼女はよほど嬉しかったのか、スキップしてもと来た道を歩いている
駅に着くと俺たちが乗るケルン行きのICEは定刻の30分遅れだそうだ
だが、ここで奇跡のようなことが起きる
カメラの動作チェックをしているとたまたま俺が過去に乗った思い出の車両が俺たちの立つホームに入線し、その様子がカメラに収まったのだ
「思い出の車両か…」と言うと「貴方のこと、そして昔の話ももっと知りたいから私達のボックス席で沢山話そうね」と上目遣いされた
とりあえず予約した一等車に乗り込む
「そうだな…あっ、窓の外見なよ。俺たちが通った議事堂が見えるよ。」「私達、付き合い出したのと同じでだいぶ遠回りして辿り着いたんだね」そんなやり取りをする2人を乗せ、ICEはハノーファーやデュッセルドルフ、そしてその先のケルンに向けて進む