とある住宅街の屋根の上。
黒い人物が静かに佇んでいる。
何をするまでもなく黒い人物、もといナツィは白いぬいぐるみを抱えて立っていた。
…と、ちらと背後を見た。
その瞬間、何かがナツィに襲いかかってきた。
「!」
ナツィはすんでの所でそれを回避する。
「…」
見ると何体かの精霊が宙に浮いていた。
「…何で急に」
学会の手の者?とナツィは心の中で首を傾げる。
「とりあえず」
やるしかない、とナツィはぬいぐるみを建物の屋根の上に置いて、どこからともなく黒鉄色の鎌を出した。
「…」
襲いかかってくる獣型の精霊に対し、ナツィは大鎌片手に突っ込む。
僕にしかできないことなんて
きっとどこにもない
必ずどこかには代わりがいて
僕が背負う必要なんてどこにもない
もしかしたらその代わりの人は僕なんかより
よっぽどよくできる人かもしれない
それでも
それでも今、この場で手が届くこと
その場に居合わせられることこそが
僕にだけ与えられた
「僕にしかないもの」なんだ!
そう信じて
そう自分に言い聞かせて
今日も手を伸ばすんだ!
たとえどんなに不格好でも
嬉しいときも悲しいときも
君を見てるとこころが騒ぐ
喉から何かがつきあげる
今すぐ吐き出してくれって
もろとも愛で縛りあげる
そんなつもりで君に触れる
こんなに悲しいのに
嬉しいときと同じこと しようとしてる
悲しいときは したって悲しい
嬉しいときは したって嬉しいのに
たまにする時、悲しくなる、
悲しくなって したくなる。