真っ白に振り積もった雪は
小さな時の変化を覆い尽くして
簡単に僕を過去へと連れ戻す。
君といたあの頃
僕はまだ銀世界に君がいることが
当たり前だって疑ってなかった。
君のいなくなった銀世界は
どこまでも白くて
どんな跡もなくて
ただ冷たいだけ
君の温もりが…
どんなに大切だったか
君との足跡が…
どんなに幸せだったか
思い返して泣いても
嗚咽は銀世界に溶けて
かき消されていく。
隠された涙も残された嗚咽も
今日のものが格別に見えたなら
手を差し伸べて どうか笑っていて
思いのままに生きるには遠い、
まだ届かない、そこにあるはずの世界
爪先に落ちたため息と長めの瞬き
音の外れた鼻歌 下手なスキップ
やけに元気なのは元気が無いからだよ
何かを探しているようだ
あてもなく意味もなく
でも確かに何かに飢えている
掴めそうに思っただけで宙を切った
冷えた想いはまだ手のひらに
喉に残るあの日の「もう一度」
もう遅いのに言いたくなる
あの日が取り戻せる気がした
幸せを数えてみる
1.今日も1日無事に過ごせた
2.お母ちゃんと話しが出来た
3.あの子が優しかった
4.皆様の暖かさに触れることができた
幸せは数えだしたらきりがないです。
本当に(*^^*)
「あ」
道連れが短く声をあげ、足音が一つ減った。俺はまだ歩き続けてるってことは、あいつが立ち止まったのか。あいつのいた方を見ると、砂に足を取られて躓いたのか、うつ伏せに転んでいた。
「……何やってんだ」
「…………」
あいつは顔を砂にうずめたまま答えない。何かヤバい気配がする。
「……これは、良くないね」
喋った。生きてはいるらしい。
「喋り過ぎた。体力がもう無いや」
「無駄話してるからだろ」
「何も言わないでいると、精神的に良くない気がして……」
あいつは立ち上がろうと手を砂に付いてはいるが、全く身体が持ち上がる様子が無い。
「……私はもう駄目みたいだから、構わず先に行って……」
冗談を吐く余裕はあるようだな。
「馬鹿言え。お前の異能無しにこんな場所歩けってのか」
「でも私、20㎏入りのお米より重いよ?」
「それより軽い奴がいたらビビるわ」
異能を使い、自分の姿を変える。爬虫類と猛獣を混ぜたような、体長3m近い胴体。砂に沈みにくい、長い指を具えた脚が4本。4本指に長い爪、鱗の生えた腕が2本と、飛ぶのには使えない、ただの飾りの皮膜翼が1対。便宜的に、自分の中で『石竜』と呼んでいる姿だ。
「足になってやる。お前が鼻になれ」
「そこは目じゃ無いん……わぁっ」
あいつが顔を上げ、眼球の無いワニみたいな顔面に驚き、変な声をあげた。
過去の過ちの正しさも
現在の選択も
未来の在り方も
問われるばかりで答えなんかない。
過去は変えようがないし
現在もどこか息苦しいし
未来だって不透明。
だからって、子供であることを盾に
大人を責めたいわけでもないし
時代を恨む気もないの。
そんなの綺麗事だよって
まっすぐ前を見据える人を、否定したくもないの。
どうすればいいの、どうしたらいいの
私に何が出来るんだろうって
その答えはきっと誰かに与えてもらうんじゃなく
私自身で、見つけたいんだよねって。
ぐらぐら今日も、悩んでるの。
もうちょっとだけ温めたい。
感じる事は、思う事はたくさんあるけれど
それを今、ぱっと放ってしまうと
手元に残るものが無い。
私にはまだ、その寒さに耐えることの出来る
強さが足りないから。
もうちょっとだけ、あとちょっとだけ。
春が訪れるまでには
届けることができるように。
「処刑…?あんたも時の能力者のはず…そんな物騒な術持ってるのか?」
「俺は時の支配者だ。やろうと思えばなんとでもなる。例えば…お前たちの時間を消す…とかな」
相手は相変わらず表情ひとつ変えない。まるで何人もそうやって手にかけて来たかのようだ。
「支配者…?随分大きく出たな」
「間違ってはいない、俺の能力は支配者のそれだ」
「能力…」
智也は自分の右手を見た。
「そうだ…ここでは能力こそが全てだ」
「なんでそう言い切れる…」
俺は拳を作る。
「簡単なことだ、俺がこのゲームの支配者なだけだ」
「は?何を言って…」
俺も智也も驚きを隠せなかった。
「ちょうどいい、冥土の土産にいくつか教えてやるよ」
相手は脅しのように掲げた左手を下ろし、戦意の無い様子を示してくる。
「聞いてやる、いいよな?智也」
「え?あぁうん、気にはなるからね、このゲームのこととか」
「このゲームは…全て俺と俺の親父によって企画されたものだ」
そう言って始まった彼の過去についての話は、俺らからしたら大して驚く内容ではない。能力者ならば多少なり心当たりのあるものだ。
「なるほど、能力者だから寂しい…その友達探しのためにこんなゲームを…ねぇ?」
「まったく迷惑な話だ…だから生き残りは50人なのか」
「そうだ、そしてゲーム形式にするのはもうひとつの目的がある。それが親父側の目的、優秀な能力者を選別して実験体を探してるんだ、生活の保証もモルモットとしての安定した衣食住ってだけだ」
「そんな…」
「ここに捕まった時点で俺たちはもう死ぬか、実験台にされるかの2択しかないってこと」
相手は無表情を貫きながら筋肉だけで諦めるように少し笑った。
「ふざけんな!なんでそんなこと!」
「だから言ったろ、処刑されるのを光栄に思えって。お前たちは支配者である俺の術をかわした栄誉のままに死ねる。中途半端な親父の実験の犠牲者にならなくて済む。これがどれだけ光栄なことか」
「はぁ」
俺は大きくため息をついた。今度は納得ではなく、すっかり呆れてしまったのだ。
「そういうのが、気に入らねぇんだよ!人の気持ちを勝手に決めんな!俺たちはそんなことこれっぽっちも望んでねぇ!そんなに実験台が嫌なら今ここで俺が殺してやるよ!」