「お前が…俺の術のタイミングをズラしたのか…」
智也は歯を食いしばりながら言う。
「察しがいいな、一瞬お前の時を止め、俺のいた位置にこいつがいるタイミングで解除した。そうすればお前の術はこいつに当たる」
やっと思い当たるシーンが浮かんだ。
あの時の…あれは俺への時間停止じゃなかったのか…
あれをかわさなければ…
いや、そうすればその時点で捕まっていたか
「言っただろう、ここでは能力が全てだ、能力を使う、かわす、そんなことは猿でもできる。大切なのはどう使わせるかだ、自分の術だけじゃなく、相手も使う。正しく支配者だ」
う…ウザイ…
しかし、言っていることは事実だ。
相手の思うようにやられた…
ここからどうやって…
俺たちは今、2人ではなく1人が2つあったに過ぎない状態…どちらかが利用されるのは必至。
ならどうやって…
今更こいつと仲良しこよしとかごめんだし…
でもそれじゃ…勝てない…
変わらなきゃ…いけない…
「なぁ智也、お前もう隠してることないよな…」
「さっきので最初で最後だよ、言ったろ、守を貶めるつもりはなかったって」
相手から目を離さないため、智也の顔は確認出来ないが嘘をついていないのは十分伝わった。
「オーケイ…ならこっからは息合わせていくぞ…」
「OKっていうか、元々そのつもりだったけどね」
心なしか、さっきよりも会話のテンポがあってるように感じた。
「作戦会議は終わったか?」
「あぁ、こっからは第2ラウンドだ」
「かかってこい…」
相手は左手でこちらを誘っている。
「いくぞ!」「うん!」
ポップで居たい。
定期的にそう思う。
ポジティブすぎるのも時に疲れてしまうけど
ネガティブすぎるのもどうなんだろう。
というか
闇を描いた、を免罪符に描く世界は
誰かの、何かの、悪口みたいになってない?
結構悩む。ずっと悩む。結局答えは出やしない。
でも私は、やっぱり文字に残すなら
暗く、冷たく、辛い時でも
ふっと笑ってしまうような
優しい、優しい世界にしたい。
水のコンパスを眼球の無い顔で見ながら、ひたすら砂の上を歩き続ける。あいつが話さなくなったせいで、実に退屈な作業と化している。鬱陶しいだけだと思っていたあいつも、結構大きな働きをしていたわけだ。
「おい怪獣」
不意に声をかけられた。声のした方に目をやるが、砂しか見えない。
「こっちだって」
そっちを見てるんだが。
「…………ああ、そういえばそうか」
目の前の砂の塊が突然崩れ、その下に偉そうに膝を組んで座る少女が現れた。
「やあ、良い天気だな?」
少女が話しかけてきた。とりあえず何も言わず睨み返しておく。
「……何だよぅ、返事くらいしてくれても良いんじゃあないの? 私、女王さまぞ?」
「ハァ?」
「お、喋った。ただの怪獣じゃないみたいだな?」
「誰だお前。女王だァ?」
「うん。異能は『無生物の支配者』、人呼んで“無命女王”。それが私だよ」
「へえ、知らない名前だ」
「怪獣よー……もっと周りの異能者に興味持て? 私、ここら一帯のボスみたいなものぞ?」
「へえ、そいつは知らなかった」
「……まあ良いや。私は用事があって忙しいんだ。その代わりに、ほれ」
周囲の砂が浮き上がり、矢印の形をとる。コンパスが指すのとはちょうど90度ほど進路がズレていやがる。
「この砂漠は、異能者が創り出したものだ」
「ンなこたァ分かってんだ」
「お前、行って止めてこい。日差しと乾燥は身体に悪いからな」
「悪いが、こちらも用事があってな」
「そっかー……」
無命女王とやらがこっちに指を差してくる。直後、手の中の水のコンパスが弾け飛んだ。
「あッ! おま、何しやがった!」
「水源なら連れて来てやる。そいつ置いてさっさと行かんか」
奴が地面を指差すと、砂の地面に小さな穴が開き、結構な勢いで水が噴き出した。地下水だったとしても透明すぎる気がしないでも無いが、まあ異能の影響だろう。
「これでそいつも平気だろう。早く行って来い」
怖い怖い怖い
貴方のその考え方、貴方の見つめるその世界
寒い寒い寒い
貴方のその表情、貴方のその発言
痛い痛い痛い
貴方のその視線、貴方のその姿勢
嫌い嫌い嫌い
何故か貴方を受け入れられなくて拒み続ける私自身
お父ちゃんがビールを飲んでいる隣で
私は麦茶をゴクゴクと飲んでみた
ビールを知らない私は
ちょっと大人になれた気がした
(妄想です)
もっと明るく居られたら。
もっと優しく居られたら。
もっと笑顔で居られたら。
あの子みたいに、あいつみたいに。
なってみたいと夢を見る。
わたしはわたしで貴方は貴方。
もちろんそんなの分かりきってる。
でもね、羨ましく、輝かしく見えちゃうんだ。
同時に、疎ましくも感じちゃうんだ。
そんなこと、思ったことないでしょう?
純粋で、まっすぐな貴方はさ。
わたしにないものを持つ君を
ただただ愛せたらいいのにな。
だけど、こんな汚い感情を持つ、
君にはないものを持つわたしには
そんな資格はありゃしない。
だから今日も、
羨望の混じった冷たい目で貴方を観る
目を閉じていちにぃさん想像の君がわらう
目を開けてぜろいちさんにぃ揃ってくる時系列
言いたい言葉はやっぱり言いたくなくて
きっと君も聞きたくなくて
まやかしにすら打ち明けられない
また困らせてしまう
まだ困り果てている
貴方を護りたいけど
見捨てたいのかも判らない
本当に良くないとわかるんだ
2年間ひとりで抱えてきたの
私だけじゃ非力なの
貴方が好きなの