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Trans Far-East Travelogue㉞

横須賀中央の駅に戻ると、運良く特急三崎口行きの電車が入線して来た
その車両を見て俺は驚きのあまり息を呑んだが嫁は
「見慣れない車両だけど,この白い車両ってそんなにビックリするようなものなの?」と訊いてくる「幼少期を象徴する車両の一つがこれなんだけど,もう引退間近でこの一編成しか残ってないんだよ。まさか、それが来てくれるなんて…」と返して乗り込み、「このモーター,音が大きいね」という嫁の一言に反応して「京急に直通してるけど地下鉄の車両さ。地下の駅ではめちゃくちゃこの独特な音が響いていて、昔は『白い悪魔』と呼んで仲間内でネタにしてたんだ。でも、それももう5、6年前のことで今はこの一編成しかない…浅草線ではほぼ置き換え済んだから世代交代の時代か…寂しいけど、仕方ないかぁ…もうこっちも世代交代か」と呟き「世代交代って?」という嫁の質問に「昔はさ、嬉しいことも辛い事も、夢も憧れも、希望も、挫折も全て鉄道が乗せてくれたから俺の心も負担が軽かった。文字通り、鉄道と苦楽を共にしてたと言っても過言ではないのさ。でも、幼少期の憧れと夢、日常を支えた車両は多くが引退した。地下鉄では唯一引退間近の車両なんだよ。でも、それも近いうちに無くなるけど、俺には長い間のお勤めだった鉄道車両の代わりに君と言うパートナーが来てくれた。つまり、これから俺と苦楽を共にする相手が昭和後期から平成初期にかけてデビューした、往年の車両達から君という平成後期生まれの若くて美しい妻に変わった。まさに世代交代と言うべきじゃないかな?」と返し、「じゃあ,巨人は?」という爆弾発言に「原監督と平均年齢30代のベテラン野手陣はまだまだ現役みたいだなぁ」と笑って返す間にも電車は進み続け堀ノ内、久里浜,野比、長沢,津久井浜と止まって行き遂に三浦海岸の駅に着いた
「砂浜,見たかったんだろ?ここから降りると見えるから行こうや」と軽く声かけると「愛し合う2人が砂浜に行く…まるで青春モノみたいね」と返ってきたので「かもしれないな。でも,俺にとっての青春は『鉄道の魅力再発見』かなぁ…」と返すと「私の場合は『貴方の魅力再発見』かなぁ…」と言って嫁が上目遣いで言ってるので「俺を惚れさせた責任,取ってくれよ?」と返すと嫁は「とりあえず,行こうか」と誤魔化している
潮風が高架のホームを吹き抜けていた

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卒業

もう寂しくはないでしょう。
もう悲しくはないでしょう。
もう怖いものは何もないし
私の未来は、貴方の未来は
とてつもなく眩しく、輝かしい。
これからの日々、私は、貴方は
時に何かを忘れてしまって
時に全てを失うでしょう。
空っぽになった時にはじめて
私は、貴方は、気付くのでしょう。
それは願いのように、祈りのように
一番遠いようで、実は一番近い
終わりの日からの祝福です。

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理外の理に触れる者:蝶と鴉と猫 陸

「さしずめ動物を操る“異能者”辺りの仕業だろう」
全く、何があったんだかとカラスは呆れたように言った。
「それにしてもお前…これからどうするんだ?」
そんな状態じゃ保って数時間と言った所だろう、とカラスは呟いた。
「…せっかくなら、助けてやろうか?」
不意にカラスが言ったので、黒羽は思わずカラスの方を見た。
「オレ様の異能は“カタチの支配者”だ」
あらゆる生物・非生物の“カタチ”を操作することができる、とカラスは笑う。
どういう、こと、と黒羽が尋ねると、カラスはこう答えた。
「簡単に言えば、異能を使う対象の見た目や性質を自在に変えることができるんだ」
まぁ実際に見てもらった方が早い、とカラスは続ける。
「どうだい、お前…オレ様に助けてもらうかい?」
別にオレ様はどちらでもいいんだが、とカラスは聞いた。
「…」
黒羽は黙って空を見上げる。
このまま死んでもいいと思ったが…せっかく外へ出られたのにここでは死ぬのはもったいない気がする。
それに、誰かが自分を殺そうとしているのは許せない。
「たす、けて」
考え終わる前に声が出た。
カラスはその様子を見てケラケラ笑った。
「じゃあ助けてやるよ」
人間、とカラスは黒羽の傍に飛び寄る。
これで助かるのか、と黒羽はホッとして力が抜けてしまい、すぐに意識が飛んでしまった。

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想い

届け、と願えば願うほど空回り
伝わらないのが、誤解されるのが一番怖いから
今日も7、8割の想いをきみに

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十数年記

私たちはまだ生まれたばかり
なのだろうか

海の中で生きてゆく
青いくるしみは続くばかりで
溺死した夢たちが
浮かぶ海で生きてゆく

街の中で生きてゆく
星空を妨害するビル街に舌打ちして
お世辞の過労死 感情の過労死
いつだって私は間違うのだろうし
このまま生きてゆく

疲れているように見える顔が
鏡の向こう側で崩壊してしまうから
そっと閉じて そっと目を閉じて
また一年後へと歩き出して

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理外の理に触れる者:海殺しのキャラクター④

・来実(くるみ)
異能:雨雪の干渉者
二つ名:白雪姫
桜の同級生にして一番の親友。異能者仲間でもあるので割とずぶずぶ。過去に『夜の指揮者』から攻撃を受けた際、日和に助けられ後見された。二つ名は桜からもらった。
異能の性質は大気中の水分や既に発生している雲に干渉し、雨を降らせる、雨を止ませる、雪を降らせる、雪を止ませる、雨を雪にする、雪を雨にするの6通り。射程距離はかなり長く、数㎞程度の範囲は余裕でカバーできる。

・湊音(みなと)
異能:時間の干渉者
二つ名:付き人
日和とは同い年でいとこの関係。そっくりでまるで双子。苗字も同じなせいで学校では双子だと思われているし、本人たちも特に否定はしていない。
異能の性質として特に得意なのは過去への干渉。過去視をしたり、過去の自身の動作に干渉して間接的に現在を改変したり、触れたものの過去の状態を現在に持ってきて固定したりといったことが可能。それ以外のこともある程度はできる。
異能者としても生物に対しては無力な日和の弱点を補う存在であり、異能者を取りまとめる『女王』の補佐役としていろいろと動き回っている。ひぃちゃんが後見した異能者に実際に指導を行うのも彼の仕事。

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理外の理に触れる者:海殺しのキャラクター③

・桜(さくら)
異能:狼の干渉者
二つ名:白狼侍
日和の1個下くらいの年齢。過去に『夜の指揮者』から攻撃を受けた際、日和に助けてもらい後見された。二つ名は日和から賜ったもので「はくろうじ」と読み、由来は後述する“白雪姫”に仕える狼の侍従ということから。
異能の性質は、「狼」という生物の定義に干渉してその条件の中に自分を割り込ませることで、自身の肉体に狼の特徴を発現させるというもの。最近、後述する”付き人”との修行の末に完全な狼化もできるようになった。

・黒崎孝太郎(くろさき・こうたろう)
異能:砂漠の干渉者
二つ名:海殺し
今作で町一つ砂漠化させたやべー奴。異能者になってから日が浅いどころじゃないので、異能の扱いには慣れていない。亮晟に後見され、どうにか異能の制御が可能になった模様。
異能の性質は、自身を中心とした半径5㎞程度の空間における環境条件に干渉し、その一帯を砂砂漠または岩石砂漠にランダムに変えるというもの。今回は砂砂漠になった。移動すれば勿論砂漠の範囲も動き、また自身から離れた位置程、元の環境の性質が重なり合ったようになる。異能を使うと世界がバグるやべー奴。

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理外の理に触れる者:海殺しのキャラクター②

・水呼(みこ)
異能:水の観測者
二つ名:水先案内人
道連れ。多分亮晟と同い年くらい。
異能の性質は、水源や水の多く集まっている場所までの距離と方向が分かるというもの。汗や涙、血液など自分の体液を水の集まった方向に引き付けさせる力もあり、もうしばらく能力を使い続ければ干渉者への昇格もあり得ない話じゃない。

・日和(ひより)
異能:無生物の支配者
二つ名:無命女王
ここら一帯の異能者を統括しているボス的存在。中学2年かそこらだと思う。異能の扱いに長け、支配者としての自覚もあり、とても偉そうで実際偉い。支配者としてとても強いので、シハイシャ・スゴイツヨイ・プレッシャーとシハイシャ・スゴイサトイ・シックスセンスが使える。

※シハイシャ・スゴイツヨイ・プレッシャー:支配者級の異能者が自分の異能の強さとそれゆえに発生する王としての責任を強く自覚していると使える、自分の強さに基づいた威圧。生物としての根源的恐怖を刺激するので、どんなに強い異能者でもビビッて動けなくなる。実際は能力でも何でもないただのハッタリ。
※シハイシャ・スゴイサトイ・シックスセンス:異能の扱いに長け、対象に慣れ親しんだ支配者級の異能者にだけ使える第六感。他の異能者が異能を使っていると、その人の位階が何となく分かる。干渉者と指揮者の違いを判別する時などに便利。

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理外の理に触れる者:海殺しのキャラクター①

・八街亮晟(やちまた・りょうせい)
異能:怪獣の指揮者
二つ名:モンスター
本作の主人公的人物。高校2年か3年くらい。他の異能者との関わりはそんなに無い(皆無ではない)。
異能の性質は怪獣への変化と怪獣の召喚・使役。身体の大きさや形状が本来のものと外れるほど変化した際に身体が動かしにくくなるが、修練によってある程度は補える。
彼が異能によって操る怪獣とは夢と浪漫と破壊力の合成であり、似非科学を含めた科学的論理によって説明可能な範囲で特殊な形状と能力を具えた物質的に実在する生物である。月の操る鬼神と異なり、霊感など無関係に観測が可能。

作中に出た手持ちの怪獣一覧
・石竜:体長約3m。4本の脚の先には長い3本の指を具え、身体と比較して異常に長い両腕から続く手は4本指であり、対向拇指の形を取っている。背中の翼はそこまで大きくはなく、飛行には使えない。放熱用のものと思われる。皮膚の熱遮断性も高く、高温環境での生息に適応している。ワニのような頭部には眼球が無いものの、何故か人間と同程度の視覚能力がある。
・人狼:体長2.5m、尾長2.3mの2本足で立つ狼のような姿の小型怪獣。尾は鱗に覆われている。厚い毛皮と体毛の色などから、寒冷地での活動に特化していると思われる。
・砂鯨:体長80m程度の白いマッコウクジラから手足が生えたような形状の怪獣。牙が長い。砂の中を水中と同じように泳ぐことができる。脂肪が厚いため、衝撃に対する耐久力も高い。
・駿竜:体長4m程度、尾長3m程度の4本脚で歩くドラゴンのような怪獣。最高時速500㎞以上で走ることが可能でありながら、鱗や体毛の性質、細長い体形などが影響し、騒音も衝撃波も発生させずに高速行動をとることができる。
・病霞:体長5m、尾長5m。巨大な黒蛇の胴体から手足が生えたような姿の怪獣。口内に並ぶ牙は鉱石のような性質をしており、それらを打ち合わせて発生させた火花に、揮発性の高い可燃性の毒液を舌下の器官から霧状にして噴き出すことで引火させ、火炎放射が可能。手持ちの中で唯一火を吹ける怪獣。毒霧を利用して有毒空間を作り出すことも可能。

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ループ

黒くなる、白くなる、
ぐるぐる混ざってゆく

赤くなる、青くなる
だんだん額を濡らしてく

暑くなる、寒くなる、
だんだん血の気が引いてゆく

幾度となく繰り返す。
幾度となくやり直す。


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