表示件数
0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ㉓

耀平にそう聞かれて、黎は静かに口を開く。
「…学校の帰りに、ネロに会った」
それでアイツと話した、と黎は続ける。
「何を?」
今度は師郎が尋ねる。
「何って…色々」
「いや色々って何だよ」
もうちょっと具体的にできない?と師郎が言う。
「…」
黎は黙りこくってしまった。
わたし達の間に、少しの間微妙な沈黙が流れた。
「…ネロは、どんな感じだった?」
沈黙に耐えられなくなった耀平がこう尋ねる。
「ネロは…いつもとちょっと違った」
あと、と黎は言う。
「ちょっと寂しそうだった」
「…」
耀平はその言葉に閉口する。
「だから、会いに行ってあげた方が良いと思う」
黎はポツリと呟く。

0

輝ける新しい時代の君へ ⅩⅣ

「エ、まあね。慣れさ、慣れ」
「なれると?あつくなくなるのか」
「ウーン、俺はそうだけど、君はやめた方がいいよ」
「そうか」少年はまだ納得していないようだったが、そう返した。この次の年、試しに35度も下らない暑さの中、1日冬服で過ごして倒れたというのは、また別の話である。
 また気を取り直し、「でも、かみが少ないのはいいな」と言って、少しだけ口角を上げた。
「ちょっとその言い方だと語弊が生じるから……これはただの坊主」
「そうか。ぼくもみじかいとすずしそうでいいとおもったから、お母さんに言ったら、まだみじかくしないって言われた」
「ははは、小学校行くまでの辛抱だね」
「うん」
 それからしばらく、髪型の話をしていると、公園の入り口のところに人影が見えた。この公園に、少年以外の人物が来ること自体大変稀だが、こんな時間となると一層珍しかった。
 人影の正体は、1人の若い女性だった。少年は彼女を知っていた。伯母の家の隣に住む外国人だ。10代だが、今年になって通勤のために引っ越してきて(わざわざ引っ越してきてまで就くような仕事はないと思うが)一人暮らしをしているそうだ。伯母がそう呼ぶので、少年は『リイさん』と呼んでいる。本名は知らない。彼女は世話焼きな伯母によく面倒を見てもらっていて、伯母にくっついている少年のことも可愛がっていた。だからリイさんが手を振ると、少年も手を振り返した。リイさんは少年のもとに来ると「オハヨウ、こんな時間にどうしたノ」と声を掛けた。
「いつも来ている。リイさんこそめずらしいな」
「今日仕事ある。だけど、いつもより遅い時間だから……今出勤するノ。そうしたら、キミが居る。だから、気になった」
 リイさんはあまり日本語を話すことが得意ではない。引っ越してきたばかりのころは殆ど日本語が話せず、伯母は四苦八苦したそうだ。
 日本語は得意ではないが、リイさんは丁寧に言葉を紡ぐ人でおっとりしているので少年と伯母からの好感度はなかなかのものだった。 
 3分程度会話をするとリイさんは仕事に行ってしまったが、会話の中で、いささか不自然な部分があった。彼女も日本語は不自由なので言葉の間違いも幾つかあったのだとは思っていた。その不自然さの本当の理由は後々知ることになるが、やはり気分のいいものではないことは確かだった。

0

画面の向こう側
輝くステージの上

遠く眩しい存在が
私に会いにきてくれた

声がでない

愛おしい嘘が
静かに、安らかに

朝へ繋がった