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部屋の隅

四角い部屋
独りで勝手に鬱々と

窓の中
空に憧れ粛々と

星と月
眩し寂しく寒々と

四角い部屋
一人が何処か悠々と

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うちの七不思議Novel Edition:鉄棒の上の幽霊 その⑥

両足が鉄棒から離れると同時に、『サメ』が地面から顔を出した。大口を開けて俺の落下地点に待ち受けている。
「そう来るだろうと思ってたぞサメ野郎!」
落ちながら鉄棒に手をかけ、一瞬地面への落下を止める。こっちの目論見通り『サメ』の牙は空を切り、俺の足のすぐ下でガチンと顎が閉じた。顎が閉じて少し安全になった『サメ』の鼻先を強く踏むようにして着地し、すぐに地面に下りて素早くスマホを拾う。電源ボタンを押してロックを解除すると、つけっぱなしになっていたカメラアプリが起動する。
『サメ』の方に目をやると、鼻を踏み潰されたショックから既に立ち直っていたようで、こっちに向かって来ようとしている。
「はい、ちぃー……ずッ!」
奴が目の前まで来たタイミングで、シャッターを切る。フラッシュを『ON』に設定しているんだ。もうかなり暗くなったこの時間帯、文字通り目の前でいきなり強い光を食らえば、それなりにキツイだろう。
奴の進路は狂い、俺を避けてすぐ横を通り過ぎて行った。
「ザマア見やがれ。じゃーな、サメ野郎」
『サメ』に向けて親指を下に向けてから、校門に向けて全力疾走を開始した。あいつが動けないでいるうちに、できるだけ距離を取らなくっちゃな。

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怪學造物茶会 あとがき

どうも、テトモンよ永遠に!です。
毎度恒例(?)の「造物茶会シリーズ」のあとがきです。

今回のエピソードは、ナニガシさんの企画「うちの七不思議」に参加するために書き下ろしたものです。
元々「造物茶会シリーズ」の各ストーリーの構想の段階であった「ナツィ達が夜の学校に忍び込んでどったんばったんする話」をベースに企画に合うように作りました。
ただ正直怪談要素はあまり含められなかった気がします。
元々キャラクターがめちゃくちゃ怖い思いをする話は作れないタチなんで、その辺は多目に見てやってください。
ちなみにこのエピソードは企画用に作ったお話なので、ストーリーのナンバリングは「第3弾」ではなく「第2.5弾」ということになっています。
その辺はあしからず。

では今回は短めですがこの辺で。
企画楽しかったです!
ありがとうナニガシさん!
ウチの企画も楽しみにしててね!
テトモンよ永遠に!でした〜

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輝ける新しい時代の君へ ⅩⅨ

(やはり、訊いてはいけなかったのか)
 今の質問をするために持てる勇気を使い切って、少年の心の中にはもう不安しか残っていなかった。急に後悔が膨張して、「いや、今のは無しだ。ごめんなさっ……」と慌てて前言撤回しようとした。
 すると、祖母は何も言わずに立ち上がり、奥の襖の向こうに手招きした。
 襖の奥に入ると、そこは六畳半の和室だった。あるのは正面に押し入れと仏壇、小さい座卓に箪笥に旧式テレビにと、誰かの部屋の様な雰囲気だった。障子を閉めているとはいえ、妙な静けさが部屋を包んでいる様に感じた。空気が悄然としていた。襖のところに立って、少年は動けなくなった。
 祖母はこちらに目配せし、仏壇の前に正座した。それを見て正気に戻ったようにハッとして彼女の横に立った。
「座りな」
 祖母は静かに言った。
 仏壇には一枚の写真が、黒い写真立てに収められている。それは白黒で、見たことのある顔だった。微塵も敵意を感じられない垂れ目が特徴的な坊主頭の男。
 あの男だった。幼少期、あの公園で出会った……幸田邦明。
「この人……」
「睦葵のお祖父さんよ」
 祖母は愛おしそうに写真を眺めた。 
 徐に線香を上げ、合掌をした。少年も見様見真似でワンテンポ遅れて拝んだ。
「少し待ってなさい」
 そう言って、古い箪笥から桐箱を出してきた。B5コピー用紙くらいの大きさで、中には封筒や葉書がいくつか入っているだけだった。随分丁寧に保存している。これが男の、幸田邦明の、祖父の書いた手紙だということはすぐに分かった。
 一番上の封筒には草書体かと思う程崩して、堂々たる『妻子へ』の文字が書かれていた。
 にわかに祖母が口を開いた。

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スマホ依存症

私が依存しているのは電話越しのあなただ。