「…」
自分はちょっとびっくりしつつ缶ジュースを見つめていたが、ネロは気にせず河川敷の方へ向かった。
自分もそれを追いかけて河川敷へ向かう。
暫く歩いて、自分達は河川敷の堤防下の芝生にやって来た。
ネロは芝生に座りつつさっき買ったばかりの缶ジュースのフタを開ける。
自分もその隣に座った。
「…ねぇネロ」
自分は思わず話しかける。
ネロは缶ジュースを飲みながらこちらに目を向けた。
「今日は、どうかした?」
ネロはそのまま前に視線を逸らす。
「…別に」
ちょっと、会いたくなっただけとネロは呟く。
「…」
その場に微妙な沈黙が流れる。
「ホントに?」
思わず聞くと、ネロはホントだよ~と口を尖らせる。
「ただ会いたくなっただけ」
そう言って、ネロはまた缶に口を付けた。
広辞苑で適当なページを開き、1d100番目の単語をテーマにして小説を書いてみよう。せっかくだから3つくらいテーマ決めてみる。
1回目:2034‐2035頁1d100=26→伝搬
①運び伝えること。伝わること。②波動が伝わること。伝播。
2回目:954‐955頁1d100=12→見物衆
見物する人たち。
3回目2198‐2199頁1d100=86→難化
教化しにくいこと。また、その人。
……これもしかしなくても難易度えげつなく高えな?
みんなもやってみると良いぜ。国語辞典とか英和辞典でもOK。
『こんにちは。此を讀んでいるといふことは、先達くんは歸つてきたんですね。彼は若いから、きつと屆けると確信していました……雪子、その後お元氣でせうか。私は今日も大變元氣です。
この後直ぐに戰地へ向かふ爲走り書きたること、生きて歸ると御約束しましたが其れが出来ぬこと、お許し下さい。
必要
「でも、逃げていたとはいえ、戦傷で死ねただけ幸せだったでしょうね」
「それは、もっと良くないことがあるのか」
「あるわよ。勇んで出征したのに、病気や飢餓で亡くなる方が沢山居たの。チフスや結核なんかはよく聞いたわ。前線に行っても病や飢餓や……仲間内の争いで亡くなられる人が相当いたそうだけど。……邦明さんと同じ班の方が……先達さんが伝えに来てくれた。だからあたし苦しくなって、折角教えてくださったのに、あたしあの人に酷いこと言って……」
「?」
「すまないね、脱線しちゃったわね。この手紙は、その時持ってきてくださったのよ」
祖母は『妻子へ』と書かれた茶色の封筒を手に取った。
満州から届けられた物は手紙だけのようだ。遺品がないことには少し疑問を持った。何か事情があって他のものが届かなかったのかもしれないが、それにしてもこの家に何も残っていないというとこはない筈だ。何か理由があるのだろうか。
遺品がなかったからと言って、だからどうしたという話になるので尋ねるのはやめてしまった。
祖母は「これ、読んでみる?」と少年に『妻子へ』の手紙を渡した。
「い、良いのか」
少年は困惑した。読んでみたいという気持ちは勿論あったが、これは祖母に宛てたものだ。同時に抵抗もあった。
「ええ、きっと邦明さんも望んでいるんじゃないかしら。分からないけれど」
「てきとうだな」
「良いのよ、あの人がてきとうな人だったから」
「それなら……」
少年はおずおずとそれを受け取ると、そっと二枚の便箋を取り出した。