数分後、石英の部隊…クルセイダースのメンバー4人はリーダーの元に集まった。
水晶の部隊も、巴、弾、寵也の3人が水晶の元へ来た。
最初3人は石英を見て、加賀屋 石英だ!とかクルセイダースのリーダーじゃないとかなんとか言っていたが、共同作戦を展開すると聞いてすぐに落ち着いた。
数分の話し合いの末、作戦は決まった。
あの種のカゲは頂点部分にコアがある。
だから高い所から狙撃してコアを破壊すればいいのだが、あのカゲは近くの動く物に反応して光線を放つ。
だからカゲの足元や建物の上で囮がカゲの気を引いている内に狙撃手がコアを撃ち抜くという算段だ。
とりあえず、本命の狙撃はクルセイダースの射撃に長けたメンバーが、囮は残りのメンバーと加賀屋隊が担当することになった。
「やっぱり名門の部隊長はすごいなー」
紀奈は歩道橋を登りながら呟く。
「あんなにサクサクと作戦決められるなんて」
「そりゃあ私達とは次元の違う教育を受けているからよ」
仕方ないわ、と巴は言う。
「あ、巴嫉妬してる?」
「してない」
弾にそう言われて、巴はぷいとそっぽを向く。
「とにかくお前ら、P.A.の準備はできてるか」
マシンガン型P.A.を準備しながら寵也が言う。
「あー大丈夫大丈夫」
「OKだよー」
「もちろん」
紀奈、弾、巴はサブウェポンの拳銃型P.A.を見せながら笑う。
「加賀屋は?」
「大丈夫」
寵也に聞かれて、水晶も拳銃型P.A.を見せた。
「あ、なるほどそういうこと。さっさと退かなきゃお前までぺちゃんこになるぜー!」
宗司も続いて飛び込み、カゲ数体をまとめて押し潰した防楯を更に戦槌で打ち、下敷きになったカゲ達のダークコアを衝撃で粉砕した。
「これ良い方法だなー!」
「1回きりですけどねー!」
「あん? まだ行くぞ」
「えっ」
宗司が向かってきたカゲたちを戦槌で薙ぎ払い、体勢の崩れたカゲたちを指す。
「バッシュ!」
「あ、そういうこと!」
小春もすぐさま広げた防楯を構えてカゲの群れに突っ込み、ブロック塀に押し付けた。
「理解が早くて……助かるぜ!」
小春が離れたところで再び宗司が戦槌で打ち、カゲの群れはまたも押し潰された。
「っしゃあ! もう1発行くぞ!」
「え、いやちょっと……」
足を止める小春に宗司が尋ねる。
「どうした?」
「こ、この楯、結構重いんですよ…………。何度も、バッシュするのは、ちょっと……キツイ、かも…………しれないです…………」
「……マジで?」
「マジで……」
「うわマジか。まあ良いや。じゃあ後ろの足止め役頼んだ」
「了解、です」
防楯を開いたまま小春はヌシから離れ、ヌシのもとに近付こうとする小型のカゲたちを押し返し始めた。
「かぁどみー!」
「分かってるって」
宗司に呼ばれ、初音は溜め息を吐きながら地面に飛び降りた。カゲたちのいなくなった地面に落下の勢いで剣を突き立てて着地する。
「よっしゃ、灯ー! もう引け!」
「やっとか前衛ども!」
それまで一人でヌシと交戦していた灯だったが、宗司に呼ばれてヌシと距離を取り、手近な家の屋根に着地した。
校長から高田美空への説教はジョーの元にも届く。
「あいつ…またやったのかよ…」
大型のカゲに乱斬りを浴びせるその手が止まりそうな程力が抜ける。しかし呆れながらもそれが彼女なりの合図だというのもジョーにはわかっていた。
「俺もそろそろちゃんとやるか…」
袈裟斬りで大きな傷をカゲに刻み、その反動を使って後ろへ飛び間合いを取る。これが彼なりの必殺技への儀式だ。鞘こそないが納刀に等しい逆手持ちでP.A.を持ち無行の位で呼吸を整える。
スーッ…ハァー…
“相手は中長距離攻撃が主体で近接戦もその応用に過ぎない。加えて触手も向きがあり他生物同様に上からの攻撃には必ず隙がある。残るはコアの位置だけど…”
…タッ…タッ…
小さいが確実に近づく足音。
「行くか」
そう呟いて走り出す。迫る触手を捌き、時に切りながら空中へ飛び上がる。触手の届かない高さまで飛んだところで姿勢を整える。落下が始まる。触手の迫る速度は先程までの比では無い。
「アァーー!」
P.A.は完璧なタイミングで振り下ろされ、次々に触手を切っていく。そのまま刃は本体を捉える。先程の乱斬りとは違い確実に刃が入る感覚。刻んだ傷が開き、さらに深いところまで刃が入っていく。進むほどにコアらしきものがはっきりとした点になっていく。しかし、当然コア付近は固く、刃の勢いも抑えられていく。
“もう少し…届け…”
その意志が止まり始めた刃を進める。刃先から今までと違う何かがジョーに伝わる。
“届いた…!”
カゲの体に足を突き刺し、体勢を取る。
“回復する前に打つ!!”
再び大きくP.A.を持ち上げる。
「ぅらぁーーー!」
彼の最も得意な斬り方で振り下ろす。
間違いない手応えでコアが真っ二つに割れ爆散する。しかしどこか様子がおかしい。
“おかしい…コアを破壊すれば体が融解するはず…”
「まさかデコイ…!?」
一瞬で考えうる全ての可能性が頭を駆け巡る。
「さすがバディ、私の期待通りだよ!」
背後から軽薄とさえ取れる愛嬌全開の声とクナイが飛んでくる。そのクナイは俺の肩口を掠め、カゲの体に突き刺さった。
「美空!お前何のつもりだ!」