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鏡界輝譚スパークラー:陰鬱プロフェッサー その⑥

「戻ったぞ、プロフ」
「見てたよ親友、ご苦労様」
「そっちこそ」
「ええ? ワタシは大変なことなんて何もしてないよ?」
「そういうのは机の上の缶を隠してから言ってくれ」
吉代が指差す先、明晶のついている机の上には、『Photonic Dorper ver.1.5.0』の空き缶が既に4本転がっていた。
「仕方ないんだよぅ。何せ私の光の力はこれっきりだからね」
明晶の手首のデバイスは、赤く染まったゲージと『1』の数字を表示している。
「ドローン飛ばすだけで馬鹿にならないんだ。電波とバッテリーの両方を光の力で代用してるからね」
「…………」
「あ、ワタシがあげたデバイス、どうだった?」
そう問われ、吉代は思い出したように右腕のデバイスを見た。
「あー、結局使わなかった。まあ邪魔にはならないから良いか、って感じだな」
「へー。あ、光の力どれくらい減った?」
「……今1133だな。5だけ減った」
「ワタシなら死ぬね」
「だな……ん」
不意に、吉代が背後を振り返った。
「どしたの」
「いや……一応、入ってくるときにはちゃんと扉も閉めたし鍵もかけたし、カゲ除けも動いてるんだろ?」
「うん? ……うん、問題無く動いてる」
明晶もモニターを確認してから答えた。
「じゃあ……この足音は何だ?」
吉代のその言葉とほぼ同時に、二人のいる部屋の入り口に、腐り爛れたような禍々しい黒い手がかかった。

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「何を見てるの」ー君を見てるよ。
「誰を見てるの」ーあなたを見てる。
その眼は私じゃない誰かを見てる?
誰でもないあなたを見てる?
「あいたいよ」ーいたいよ、いたい。
「まってるよ」ーまっててって言ったのに。
「ずっと見てるよ」私はずっとあなたを見てた。

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鏡界輝譚スパークラー Crystal Brother and Sister ⅩⅢ

「石英さん」
石英が振り向くと、石英の部隊のメンバーの少女がいた。
「この後どうしましょう」
「あーそうだね」
石英は宙を見る。
「幕文の方へ戻って荷物をまとめた後、ぼく達のSTIへ帰ろうと思う」
折角なら先に幕文の方へ戻っててもいいよ、と石英は付け足す。
「了解しました」
ではお先に、と少女は言うと、残りのメンバーと共に去っていった。
「…」
加賀屋隊の面々はその様子を黙って見ていると、石英がこう言った。
「そう言えば」
不意に石英が口を開いたので、水晶は兄の方に目を向ける。
「昔の約束、果たせたね」
「?」
兄が急にそう言ってきたから、水晶は首を傾げる。
「昔約束したじゃないか」
いつか一緒に戦おうって、と石英は笑いかける。
「…あー」
水晶はやっと思い出したのか、恥ずかしそうな顔をした。
「水晶が違うSTIに行っちゃったから、もう一緒に戦えないと思ってたけど…」
よかったよ、約束が果たせてと石英は呟いた。
「…別に、あれは“同じSTIで戦おう”という意味でこういうのじゃ」
「もー照れちゃってー」
水晶がそっぽを向きながら言うのに対し、石英はにこにこ笑う。
「…また一緒に戦えるといいね」
石英がそう言うと、水晶はそうですか、と淡々と答えた。
「じゃあそろそろ幕文へ戻ろうかー」
早くしないと日が暮れちゃうよーと石英は伸びをしながら歩き出す。
「…加賀屋さん」
巴に名前を呼ばれて、水晶は振り向く。
「私達も帰りましょう」
私達のSTIへ、と巴が言うと、水晶はこう答えた。
「うん」
そして加賀屋隊は帰るべき場所へと歩みを進めた。

〈おわり〉